A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

ヘルシンキ 生活の練習

入院中の次男にトミカの差し入れをするためではあったりするのですが、近所に本屋さんがあり、何気なく並べてある本を眺めたり、「お、いいかも」と目にとまった本を手にとって読む、というプロセス自体が好きです。フィンランドはパヌがいるせいか、何度か行ったことがあるせいか、好きなのでついつい手にとってしまった。個人的にはもっとフィンランドの話…という気もしたのですが*1、等身大な「生活の練習」という感じでした。ちょくちょく出てくるフィンランド*2の異なる視点のコメント(というか日常の何気ない一言?)が「自分の思い込みを気づかせてくれて」いいなぁと思い、これが日本以外の国に住むこととの特権だなぁと思ったりしました。なんというか、やはり日本を出る選択肢とか個人的にはないのですが、もっと自由に考えてもいいのだなと思わせてもらったり。以下に気になった本文のごく一部転記。単にドライなだけなのかもしれませんが、なんとなく子どもも一人の人としてみているみたいな感じがしてよかった(というより、そういう区別すらなんとなくボクの思い込みなのかもですが)。

  • こちらの保育園では、「個人(岩崎注:こども)がサービスを利用する」という感じがして*3
  • 「才能」ではなく「スキル」
  • 「練習が足りているところ」と「練習が足りていないところ」があるだけだ。

*1:あと、これも単なる好みですが、著者の好みがやはりちょっと出ていて、いやボクが期待しているものはその話ではないとつっこみたくなったりもしましたが。まぁなんとなくそれも許してしまう文体という雰囲気もあるような気がしました

*2:とかいうとこれまた著者の意図の反しそうですが

*3:個人的に確かに保育園って親が働きに出る間に子供をみてくれる場所みたいなイメージがあったので、この発想自体が新鮮だったし、素直にそういう解釈の方が健全だなぁと思った

廃水の希釈が放流先河川の水生生物の状態に重要

Büttner, O., J. W. Jawitz, S. Birk, and D. Borchardt. 2022. Why wastewater treatment fails to protect stream ecosystems in europe. Water Research 217:118382.

久々にざっと眺めた論文。ヨーロッパ全体で、ecological statusと廃水の希釈割合の関係を調べた論文。前者は、highとgood、とそれ以外に分けて、後者はドイツの例をベースに?いくつかの仮定を置いて計算した値。3次以下の(規模の小さい)河川では、希釈割合がecological statusと関係していて(といってもばらつきはある)、ロジスティック回帰すると、6.5%を超えると、約50%の確率で、high及びgoodか、それ以外に分かれると推定している。そんなに目新しいとは思わないんだけど、こういう閾値っぽいものを広域でempricalに推定したのが評価されたという感じかなと想像します。一つのimplicationsとしては「放流場所を賢く選出すべし」。場を考えると廃水の質も重要になってくると思うので、実際に運用にどう繋がっていくかはいまいちピンとこないのですが、まぁでも「放流先河川の流量が大事ですよ」というのを広域かつデータで示したのがすごいということで*1

*1:なんというか、そんなことまでデータで出さなきゃダメ?という気にもなりますが

英語の発表

国外の方を対象に、久々に英語で約1時間ほど発表するという機会があった。オンラインなので逐一の反応がわかんないのが残念なんだけど、終わった後に自然と出てきた拍手アイコンから想像するに、少なくともある程度の人は理解して楽しんで?くれたのではと思いたいところです。
1時間も喋るとなると、カンペの準備は諦めて、各スライドの入りの部分だけメモして、少し流れを復習して、という感じで準備したのですが、なんとかなって良かったです。まぁ自分の出来がいまいち自分では判断できないのが難しいところではあるのですが。。。
手を挙げるボタンも使ったのですが、挙がっている手の数のカウントが地味に煩雑だったので、数のカウントがテキトーになったのも申し訳ないところではあります。
マニアックな話題だけど、質問もいくつかくれて、ボクも日本の状況との違いを実感できたり、個人的にも良い刺激になりました。自分の課題(自分の知識で取り組む必要があると思う課題)に取り組むのもいいんだけど、対面のイベントが減って、自分と異なる意見や状況に触れる機会が減っているだろうなぁとも改めて思いました。

2021年の振り返りと2022年の目標

毎年この記事の作成が遅くなっている気がしますが,本年もよろしくお願いいたします。なんというか,もうなんか忙しくない人っているんですか?って飛び交うメールを眺めながら,感じてしまう今日このごろです。今年も,月に数回職場+たまに野外調査という感じで,主にテレワークな日々でした。そのおかげか,昨年同様,論文のアウトプット自体はわりとできたんではないかなと思います。年明け早々,やっぱそうですよねぇ,という感じで,2月からあまり研究できなくなりそうですが,まぁこれも良い機会と思ったりもしています。一方で,忙しい中でも,現状の勤務体系の中にある自由度はやっぱボクの中で大きいんじゃないかなぁと思ったりもしています。

研究

  • 論文は,昨年ここで紹介したものを除くと,国際誌は,主著2本,共同主著論文で1本,共著で5本(1本はコレスポ),国内誌は,主著で3本(総説,資料,報告),共著で1本(コレスポ)という感じでしょうか。振り返ってみると,個人的には論文をよく書いた感があるのですが,思ったより国際誌主著は数少ないなぁという印象。個人的に出したいと思っていた論文が着実に出せていて満足です。一通り言及しつつ整理すると長くなってしまいましたが…。
    • Yuichi Iwasaki*, Keiichi Fukaya*, Shigeshi Fuchida, Shinji Matsumoto, Daisuke Araoka, Chiharu Tokoro, and Tetsuo Yasutaka (2021) Projecting future changes in element concentrations of approximately 100 untreated discharges from legacy mines in Japan by a hierarchical log-linear model. Science of the Total Environment. 786, 147500. (*These authors contributed equally to this work; Y. Iwasaki is the corresponding author)
      • FKYさんにモデリング部分を手伝ってもらった書いた論文*1。愚痴?も含めて,詳しくは本ブログのこちらを見ていただければと思いますが,いま関わっているプロジェクトや評価関係的にもこれがきちんと論文にできてよかった。関係者の皆さまありがとうございます*2
    • Yuichi Iwasaki, Kiyan Sorgog (2021) Estimating species sensitivity distributions on the basis of readily obtainable descriptors and toxicity data for three species of algae, crustaceans, and fish. PeerJ. 9:e10981.
      • もう受理がほぼ1年前で少し記憶が…という感じではあるのですが,この論文もきちんと出せてよかったです。記事はここ。3種でもわりと上手く種の感受性分布推定できそうですよって,ありそうでなかった話だと思います*3。この展開もいくつかやりたいネタがあるのですが,全然手が足りない…。
    • 岩崎雄一,加茂将史. 2021. 最小の毒性値に不確実性係数を用いて導出される予測無影響濃度の限界を意識することのススメ. 環境毒性学会誌 24,43–47
      • ある種タイトル通りではありますが,上の成果もこそっと紹介しつつ,現状の評価方法の問題点を指摘して,種の感受性分布を使うことの意義や妥当性を説明した資料論文(査読ありです)。本ブログでの紹介記事はここ。改めて,LRIから研究予算を頂いたまとまったエフォートをSSDの研究にかけて,色々勉強になったなぁと思っております。ありがとうございます。もう一本くらいは出ると思います。あとまだもう2つくらいやり残したことがあります…。
    • 岩崎雄一,眞野浩行,林彬勒,内藤航(2021)マイクロプラスチックの水生生物への粒子影響に着目した有害性評価の現状と課題. 環境毒性学会誌 24,53–61.
      • LRI繋がりで,マイクロプラスチックを対象に種の感受性分布を用いて有害性評価を行った論文をレビューして,現状と課題を整理しました。こういう情報整理は日本語ではなかったと思うので,良かったと思います。
    • Kazutaka M. Takeshita, Yuichi Iwasaki*, Thomas M. Sinclair, Takehiko I. Hayashi, and Wataru Naito (accepted) Illustrating a species sensitivity distribution for nano- and microplastic particles by using Bayesian hierarchical modeling. Environmental Toxicology and Chemistry.
      • 先日受理されて,この論文はまだオンラインにはなってないのですが,階層ベイズモデリングSSDで,ナノ及びマイクロプラスチックを対象に粒子サイズや試験媒体の効果を考慮しつつSSDを書いたというものです。またオンラインになったらここで紹介したいと思います。HYSさん紹介でTKSTさんを巻き込めて,個人的にとても助かりました。この論文も個人的にきちんと公開できそうでとても嬉しい1本です。
    • 岩崎雄一,村田道拓,川口智哉,松本親樹,保高徹生 (2022) 坑廃水原水を放流する場合に休廃止鉱山下流の水質測定地点の金属濃度は環境基準を達成できるか?単純希釈に基づくスクリーニング評価 Journal of MMIJ
      • これも先日受理されて,まだオンラインになっていません。タイトルの通りですが,これもきちんと論文になってよかったです。といっても,Journal of MMIJの「報告」枠ですが。資源素材学会の雑誌にも論文を載せられてよかったように思います。オンラインになったら,またここで紹介できればと思います。
    • Kyoshiro Hiki, Kenta Asahina, Kota Kato, Takahiro Yamagishi, Ryo Omagari, Yuichi Iwasaki, Haruna Watanabe, and Hiroshi Yamamoto (2021) Acute toxicity of a tire-rubber derived chemical, 6PPD quinone, to freshwater fish and crustacean species. Environmental Science & Technology Letters 8(9): 779–784.
      • 貢献度は低いのですが,これもいい思い出です!これ知ってる?的にHKさんにメールしたら,標品ないので合成ができる人居ませんか?みたいになって,ちょうど少し前に知り合った弊所のASHNさんに相談したら,できますよ,との流れで,トントン拍子に?研究開始まで展開した感じです。リンクの強さというか大事さというか,そういうのを改めて実感しました。あと,やっぱHKさんが仕事が早い。
    • Michio Murakami, Fuminari Miura, Masaaki Kitajima, Kenkichi Fujii, Tetsuo Yasutaka, Yuichi Iwasaki, Kyoko Ono, Yuzo Shimazu, Sumire Sorano, Tomoaki Okuda, Akihiko Ozaki, Kotoe Katayama, Yoshitaka Nishikawa, Yurie Kobashi, Toyoaki Sawano, Toshiki Abe, Masaya M. Saito, Masaharu Tsubokura, Wataru Naito, Seiya Imoto (2021) COVID-19 risk assessment at the opening ceremony of the Tokyo 2020 Olympic Games. Microbial Risk Analysis. 19, 100162.
      • 途中参加で,あまり貢献できてないのですが,個人的にはこういう評価ができるモデルを作った意義はとても大きいのではないかなぁと思っています。プレスリリースはこちらです。MARCOという有志研究チームでやっています。リスク研究者の懐の広さも含めて,陰ながら刺激を頂いております。
    • Naohide Shinohara, Jun Sakaguchi, Hoon Kim, Naoki Kagi, Koichi, Tatsu Hiroyuki Mano, Yuichi Iwasaki, Wataru Naito (2021) Survey of air exchange rates and evaluation of airborne infection risk of COVID-19 on commuter trains. Environment International, 157, 106774.
      • SNHRさんの凄さを実感しました(いろんな意味で)。実験しんどかったっす。
    • 香川裕之,岩崎雄一*,木村啓,犬飼博信,佐々木圭一,安田類,保高徹生,山縣三郎,河村裕二(2021)鉱山廃水流入河川における底生動物及び付着藻類群集の流程変化:金属汚染に対するこれらの生物群集の変化は異なるか?環境学会誌 44,115-124
      • 査読しんどかったのですが,勉強になる指摘も頂けて,個人的には勉強になりました。KGWさん,お疲れさまでした。藻類と底生動物を同時に調査した経験はなかったので,その意味でもこういう話に混ぜてもらいボク自身も経験になりました。
    • Hiroyuki Mano, Yuichi Iwasaki, Naohide Shinohara (2022) Effect-based water quality assessment of rivers receiving discharges from legacy mines by using acute and chronic bioassays with two cladoceran species. Water Supply.
      • これも最近受理された共著論文。推進費の成果で,鉱山周辺で採水し,ミジンコを用いた生物応答試験の結果がまとめられています。この結果と庭生動物調査との結果を比較したものを出すのがボクの担当…。。生物応答試験って実際の環境影響との関連がいまいちだからなぁって当初は思っていたのですが,実際にMNさんとやってみて(ボクは試験してないですが),やって良かったなぁと思っています。
    • Kyoshiro Hiki, Yuichi Iwasaki, Haruna Watanabe, Hiroshi Yamamoto (2022) Comparison of species sensitivity distributions for sediment-associated nonionic organic chemicals through equilibrium partitioning theory and spiked-sediment toxicity tests with invertebrates. Environmental Toxicology and Chemistry.
      • これも比較的最近受理されました。底質の毒性ってこうやって予測できるのかぁっていうのと,試験自体にも色々難しいところがあるのだなぁとわかって面白かったです。これも種の感受性分布(SSD)を活用したお話。
  • 変わらず,テレワークの日々
    • 去年同様に,ほぼテレワークでした。特段変わりないのですが,椅子はバランス シナジーを自前で購入しました。コンパクトで,個人的には気に入っています。たまに行く職場で皆さんと対面で雑談するのもいいですが,すっかりテレワークに慣れてしまいました。
    • 学会も,オンラインでSETAC NAとAUにも参加しました。録画で楽なのですが,やはり何かもう一つ…という感じがします。オンラインだと,あまり学会に参加しようというモチベがそろそろ…という感じです。AUは一応Discussionのセクションで質疑の時間があったのですが,調査中でレンタカーの中から参加しました*4
    • 野外調査はそこそこいけた気がします。外注も含めて,春秋で底生動物調査ができたし(O鉱山),科研費の調査も含めて,今年は和賀川にも3回ほど行きました。来年は,Y鉱山でほそぼそでも調査できるといいなぁと思っています。
  • 休廃止鉱山における利水点等管理及び生態影響評価のガイダンス(案)が公開
    • ここ数年作成に関わっていたガイダンス(案)が4月に公開されて,個人的にはとてもうれしく思っています。ここの下の方。ガイダンス(案)ができてもそれが使われないと特段という感じではあるので,引き続きがんばります。生態影響評価ガイダンス(案)は,休廃止鉱山以外のケースでも活用(参考にして)いただけるかなと思います。。

日常

  • 帰高は秋に1回のみ。往復サンライズという特殊な移動方法ですが,意外と快適で楽しかった気がします。
  • 次男は2歳で,よくしゃべっています。鼻歌をしながらパズルをするのが,面白い。長男は,筆算3桁とかもやっていて,なんというかすごいですね…という感じです。4月から小学生!
  • テレワークなので,かなりの割合で送り迎えを担当したせいか,長男のときよりも次男がなついてくれているような気がします。
  • 夏休みは,昨年に引き続き再度,群馬方面で恐竜。相変わらず恐竜センターはほぼ貸し切りだったし,川にも足つけて遊んだりできたし,カブトムシもとれたし,個人的には2回目でもまた楽しめて良かったように思います。秋には,福井の恐竜博物館あたりにもいって,こちらもとても良かったです。

今年の目標・抱負

  • 2月から少し動きがありそうで,しばらくあまり研究ができなくなりそうですが,ぼちぼち生きていきたいと思います*5
  • 論文は,投稿中の3本*6を受理までもっていき,推進費のまとめ論文を早めに投稿したいところです。
  • どれくらい研究できるか不明ですが,科研費の底生動物の方の解析をほそぼそでも進めたいし,SSD研究でやってみたいと思っていることをやりたい。。。
  • 今まで1回も行ったことがない日本の学会にも参加したい*7
  • 英語の総説(ひとまず書いておくが,予定なし)
  • オンラインで英会話を習ってもいいかも(とずっと思っているけどこれも結局できてない…)。
  • 環境が変わるタイミングなので,これを機に今後も含めて色々考える時間が取れるといいなぁと…思っていますが…はてさて。

*1:FKYさんとの共著が個人的なモチベの源泉の一つでした

*2:Teams越しでしかご相談できていないAさんとかにも今年は会えるだろうか

*3:一方でまぁある程度予想できるよねというのはあると思います

*4:なんというかなんでもできるなぁと思ってしまった

*5:これ自体は,いろんな経験をできる良い機会かなとも思っていますが,はてさて

*6:国際誌と国内誌の主著1本,コレスポが1本

*7:今年もコロナ禍で新しい学会に参加はできてないですね…

種の感受性分布に関するセミナー

11月に環境毒性学会の主催で始まった環境毒性リレーセミナーの第1回の録画が,Youtubeに公開されています。生態リスク評価(特に有害性評価)の基本的な部分を理解できていれば,わりとすっと種の感受性分布が理解頂けるのではないかなぁと思っています。後半はゆるゆると質疑応答しております。最初の部分の録画をしそこねていたので,取り直しているのですが,朝一家族が寝ている間にとったので,テンション低めですみません。永井さんの部分はどこまでが録画なのか,わからないくらいにうまく繋がっています笑 質疑で言及している論文は以下の感じかなと思います。わりと,岩崎・加茂(2021)に関連論文への誘導はできていると思いますし,永井さんが作られたSSDのマニュアルもとても参考になると思います。


www.youtube.com

Posthuma, L., van Gils, J., Zijp, M.C., van de Meent, D. and de Zwart, D. 2019. Species sensitivity distributions for use in environmental protection, assessment, and management of aquatic ecosystems for 12 386 chemicals. Environ. Toxicol. Chem. 38(4), 905–917. doi: 10.1002/etc.4373
Hoondert, R.P.J., Oldenkamp, R., de Zwart, D., van de Meent, D. and Posthuma, L. 2020. Reply to “Concerns About Reproducibility, Use of the Akaike Information Criterion, and Related Issues in Hoondert et al. 2019” and Focus in Developing QSAR-Based Species Sensitivity Distributions. Environ. Toxicol. Chem. 39(7), 1302-1304. doi: 10.1002/etc.4737
Sorgog, K. and Kamo, M. 2019. Quantifying the precision of ecological risk: Conventional assessment factor method vs. species sensitivity distribution method. Ecotox. Environ. Safe. 183, 109494. doi: https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2019.109494
Iwasaki, Y. and Sorgog, K. 2021. Estimating species sensitivity distributions on the basis of readily obtainable descriptors and toxicity data for three species of algae, crustaceans, and fish. PeerJ 9, e10981. doi: 10.7717/peerj.10981
Hiki, K. and Iwasaki, Y. 2020. Can we reasonably predict chronic species sensitivity distributions from acute species sensitivity distributions? Environ. Sci. Technol. 54(20), 13131–13136. doi: 10.1021/acs.est.0c03108
岩崎雄ー, 加茂将史 2021. 最小の毒性値に不確実性係数を用いて導出される予測無影響濃度の限界を意識することのススメ. 環境毒性学会誌 24, 43–47. doi: 10.11403/jset.24.43

皆様,良いお年をお迎え下さい。

マイクロプラスチックの実態と未来予測

ボクなんかが説明するのも恐縮ですが,海洋プラスチックごみ問題の現状から,問題点の整理(それもかなり幅広く),実際の海岸での観測から始まる研究の経緯,最新の研究成果である将来予測までを,とても魂が伝わってくる文章でほぼ半日で読み切ってしまいました。めっちゃ良かったです。本書へのモチベはあとがきの「査読を経て国際学術誌に発表した話以外は書かない」という言葉からも伝わってきます。ちなみに,以下の講演動画もおすすめです(小並感)。ボクはこの動画を見て本書を買ったのですが,引用文献たっぷりでボクみたいな方にもおすすめです。個人的は,Ecotoxな分野では馴染みあるのBurtonのES&Tのviewpointが出てきたのも良かったです。
youtube.com

マイクロプラスチックの有害性評価の現状と課題

岩崎雄一, 眞野浩行, 林彬勒, 内藤航. 2021. マイクロプラスチックの水生生物への粒子影響に着目した有害性評価の現状と課題. 環境毒性学会誌 24:53-61. 10.11403/jset.24.53

タイトルの通りなのですが,マイクロプラスチックの粒子影響という観点から,種の感受性分布を用いて有害性評価した既往研究をレビューして,現状と課題を整理した総説論文を出しました。MPの曝露や動態の情報は,日本語で結構あるのですが,リスク評価とか予測無影響濃度の文脈で,有害性評価の話を書いたものはないので,わりとよい日本語の情報にはなるのでは?と思っています*1。個人的には,本論ではないのですが,「はじめに」の後半あたりで記述した議論(2点)ほどは,紹介できて良かったなと思います*2。詳しくは是非本文を!

*1:国際誌が自分で読める人はおいておいて

*2:このあたり今後つっこまれるかもしれませんが,是非色々議論が展開するといいなぁと思います