生物多様性指標関連の文献読み
最初にいっておきますが、脈絡や包括性はないです。自分が読んだ順番に。
Thackeray, S. J., Spencer, M., Bowler, D., Burris, D., Fletcher, M., Fournier, I., Jones, J. I., Lavictoire, L., Mackay, E. B., Moorhouse, H. L., Ormerod, S. J., Pearce-Higgins, J. W., & Johnes, P. J. (2026). The changing status of freshwater biodiversity monitoring in the UK [Project Report]. https://nora.nerc.ac.uk/id/eprint/541713/
Steveが入っていて、LinkedInでshareされていたので、読んだ報告書*1。専門家等にアンケートをしたあとに、その結果とともにワークショップのようなものをしてそれをまとめた報告書。イギリスでも抱えている問題は、日本と似ているなぁと思った。特に河川にモニタリングが偏っている(Pondのモニタリングは相対的にされていない)とか、(市民による)長期モニタリングの大事さ(を伝えることの大事さ:モニタリングはデータ収集以上の価値がある)とか、専門家間で色々と認識・印象の違いがあるとか。このアンケートを実施して認識を聞くという取組み自体も面白い*2。
Pereira, H. M., Ferrier, S., Walters, M., Geller, G. N., Jongman, R. H. G., Scholes, R. J., Bruford, M. W., Brummitt, N., Butchart, S. H. M., Cardoso, A. C., Coops, N. C., Dulloo, E., Faith, D. P., Freyhof, J., Gregory, R. D., Heip, C., Höft, R., Hurtt, G., Jetz, W.,…Wegmann, M. (2013). Essential Biodiversity Variables. Science, 339(6117), 277-278. https://doi.org/10.1126/science.1229931
必須(重要)生物多様性指標(EBVs)の紹介記事。まぁとりあえず眺めておいたほうがいいかなと思って、眺めた。EBVのフレームワークは、種のインベントリ(生息するすべての種を特定すること)よりも、同じ分類群を同じ場所(地域)で短いインターバル(1~5年)で繰り返し観測することを重要視している。
環境省 生物多様性及び生態系サービスの総合評価に関する検討会. (2025). 生物多様性及び生態系サービスに関する総合評価2028(JBO4:Japan Biodiversity Outlook 4)に向けた中間提言. 東京都 Retrieved from https://www.env.go.jp/press/press_01428.html
KDYさんが生態学会で報告していたりした内容だと思うけど、口頭発表を聞いていたので、なんとなく流し読みできた。その時に思ったことだけど、こういう取組みしてたのですか!って感じだったし*3、とてもおもしろいなぁと思った。僕の理解した限り、GBFのターゲットの分け方と、JBO4の分け方が違っていてあれっと思ったけど、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)→ 日本の生物多様性国家戦略2023-2030 → JBO4という流れ。EBVsはJBO4の状態目標1-1の中の種の分布とか個体数とかの話につながる話*4。JBO4はいろんな指標を考慮していて、面白いので、興味があれば眺めるといい気がします。
Jetz, W., McGeoch, M. A., Guralnick, R., Ferrier, S., Beck, J., Costello, M. J., Fernandez, M., Geller, G. N., Keil, P., Merow, C., Meyer, C., Muller-Karger, F. E., Pereira, H. M., Regan, E. C., Schmeller, D. S., & Turak, E. (2019). Essential biodiversity variables for mapping and monitoring species populations. Nature Ecology & Evolution, 3(4), 539-551. https://doi.org/10.1038/s41559-019-0826-1
真面目に読んでいないけど、EBV for species distributionとEBV for species abundanceとして、観測値ではなくて、モデルを介した、それぞれ、ある任意の空間+時間的ユニット中の出現確率と予測個体数と定義しているのが面白いところだと思う。確かにそういうデータを国際的に揃えられたら、スケールアップすることはかなり容易になるというのはわかる気がする。
Sun, T., Hughes, A. C., He, K., & Yu, L. (2026). Ecological Integrity Index, timely annual tracking of biodiversity change. Scientific Data, 13(1), 174. https://doi.org/10.1038/s41597-025-06485-5
MTHSさんのFBから。こういう指標を提案する論文がScientific Dataに載るのもちょっと面白いのですが、リモセンから得られる生産性とCanopy Height、いろんな指標から計算したHuman Footprintを使って、Ecological Integrity Indexというものを作ったという論文。(中身は理解できていないのですが)既存の種分布モデルとかから作った指標より良さそうよ、という結果のようです。ほぼメモとして。
化学物質の生態リスク評価と生物多様性評価を繋げる必要性
TNFDの文脈をとかで、個人的に、生物多様性保全にどう貢献しているかよくわからない化学物質の生態リスク評価の将来はないんじゃないかなぁとぼんやりと危惧していたりしていたのですが、JBO4とか昆明・モントリオール生物多様性枠組とかを眺めていると(というか、TNFDそのものもそうなんだけど)、結局、Driversと生物多様性の評価自体は分けて考えられていて、(こういう文脈で)そこまで(一生懸命)リンクさせることを考えなくてもいいのではないか、とふと思って、個人的にすっきりした。まぁでも、この文脈だと曝露評価は安泰だけど、有害性評価の存在意義はどうなの、というところは依然としてあるのは確かだと思う。
OECDのBiodiversity from a chemicals perspective: tools for reducing the negative impacts on the environmentというイベントを昨日一昨日と聞いていて、みんな既存の文脈や手法を一生懸命説明しつつ、なんとも腑に落ちない発表をしていて、聞きながら、うーん、このレベルかぁと思っていたんだけど、逆にここまでしないといけないのか?とふと思い直して、上の考えに至った感じです。
www.oecd.org
いやでも、繋げられるといいですよね!
マイクロプラスチック粒子の種の感受性分布
Iwasaki Y, Takeshita KM, Ueda K, Naito W (2026) Bayesian species sensitivity distribution modeling for microplastic particles: Integrating particle characteristics and intraspecies variation. Environ Toxicol Chem:vgag066. doi:10.1093/etojnl/vgag066
https://doi.org/10.1093/etojnl/vgag066
こんな事を言うと怒られそうですが、個人的に、マイクロプラスティックの研究はあまり好きではありません*1。ただ、続けていると、思い入れのある研究もできたりするのが憎いところです。この論文は、個人的に、おそらくこれまで取り組んできたマイクロプラスチックの生態リスク評価研究(といっても、種の感受性分布の推定)の中で、最も「これだ」という成果になったと思います。
やったことはこれまでの研究の延長線上ではあるのですが。。。従来の種の感受性分布(SSD)では、任意の化学物質1種について種ごとの感受性(影響濃度)の違いを扱うのですが、マイクロプラスチック粒子では多様な特性をもっており(ある種の複数の化学物質を扱っているような感じで)、粒径や形状などの粒子特性が毒性に大きく影響する(可能性がある)ため、これまでのSSDの枠組みでは、それを考慮できません。そこで本研究では、
- 粒径などの粒子特性(これは、これまでの我々の既往研究でも考慮していた)
に加えて、
- 同一種内の感受性のばらつき(intraspecies variation)
を扱える、ベイズSSDモデルをToMEx 2.0に搭載された有害性データに基づき構築しました。合わせて、
- HONECという最大濃度区でも影響が得られなかった試験結果をモデルの中で右打ち切りデータとして統計的に考慮
することも行いました。すなわち、このモデリングによって、既存の評価では除外されてきたHONECを推定に用い、種毎の感受性(+種内のばらつき)を考慮しつつ、さらにマイクロプラスチックの多様な特性を考慮できる、種の感受性分布が推定できるようになりました*2。
得られた種の感受性分布*3について、各ユーザーのデータを入力することで、**影響を受ける種の割合(Fraction Affected; FA)**を推定できる、Webアプリも公開しています。
A single-site ecological risk assessment for microplastic particles
是非、ご活用ください!
QSSRとかSSDとか生態毒性の予測とか
ちょっとぼやっと関連する論文を読んで個人的なメモを残していきたい。
Posthuma L, Price T, Viljanen M (2025) Improving the Ecotoxicological Hazard Assessment of Chemicals by Pairwise Learning. Environ Sci Technol 59:16250-16260. doi:10.1021/acs.est.5c01289
Leoさんの論文*1。なぜか見つけて面白そうだったので読んでみた。Pairwise learningという方法を使って、生物種と化学物質の全組合せの毒性値、一部の限られたデータから予測するモデル。モデルの中身は単純そうなんだけど、これでそんなにうまく推定できるのかなぁとちょっと不思議な感じ。ボクの理解だと、確かにデータがないわりにはうまく行っている場合もある、という感じがする。ただ、この組合せみたいなのを考えるのは確かに面白いなと思った。実務で使えるかというと、真っ当に使える場面がどんな場面か考えないときつい気がする。
Notenboom J, Vaal MA, Hoekstra JA (1995) Using comparative ecotoxicology to develop quantitative species sensitivity relationships (QSSR). Environ Sci Poll Res 2:242-243. doi:10.1007/BF02986776
Leoさんの論文に引用されていたコメント論文。こういうのが1995年にあったのね、という意味で面白い。化学物質ではなくて、生物種(間)の毒性予測を、化学物質と同じような枠組みでできる(可能性がある)よね、という話。2ページくらいなのでさらっと読める。DEBも出てくる。
Zhu Y, Zhang M, Han P, Zhu S, Chen J, Li X (2026) MarineTox Predictor: An Online Library Platform for Enhancing Low-Resourced Saltwater Ecotoxicity Prediction via Knowledge Sharing from Freshwater Ecotoxicity. Environ Sci Technol10.1021/acs.est.5c15496
深層学習。モデルの中身は深く理解できていないけど、淡水毒性のデータも使いながら、データの少ない海水毒性を予測するという感じ。過去に比べて精度は上がっているけど、実際にすごいいいかというと、うーんという感じ。ボクの理解では。
*1:実際の解析は後ろのお二方がやっているという感じ
宮地賞など
今年3月から4月にかけての報告などを。。。
- 宮地賞
- ありがたいことに、3月の生態学会に第30回の宮地賞をいただけました(受賞講演要旨、選考理由等)。去年8月に、もう若手感がなくなってきたけど、やはり宮地賞は一度は挑戦してみたいと思って、ダメ元で応募してみたら(自薦)、選んでいただきました。選考委員の皆さま、ありがとうございました!受賞講演の出来は、ボクの発表にしてはわりと準備できてよかった方じゃないかなと思うのですが、終わってみると前向いて発表してたかなぁとか、色々思ったりもするものです。最後に、短いながらに、魂の論文を自分の好きな学会の学会誌に投稿しましょうよ、というメッセージを伝えられたので、ボク個人は満足です。生態学への貢献はいうものはアレですが、生態学をベースとして研究をしてきたものとして、とても嬉しく思います。子どものこととか、研究のこととか、色々と思うところが出てくる時期ではありますが、もっと頑張れよ、と言われたと思って、引き続き、精進していきたいと思います!
- 上級
- 職場の身分に4月から、上級がつくことになりました。といっても、これまでとやることはかわらないのですが。。。一応ここに個人的なメモとして置いておきたいと思います。何年かごとに審査があって更新らしいのですが、まぁでも気負わず自分が面白いと思うこと(少しずつ背伸びしながら)を続けていけたらなぁと思います。

