A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Iwasaki, Y. & Brinkman, S.F. (2014) Application of generalized linear mixed model to analyze mixture toxicity: Survival of brown trout affected by copper and zinc. Environmental Toxicology and Chemistry, n/a-n/a.

ここでも少し触れたET&Cの金属の複合影響の特集号に載る予定のもう一本が受理されました*1。難しいことはやっていなくて,生態毒性系ではあまり使われていないGLMMを使って,同時に一連の実験が行われなかった(この論文で使ったデータではいくつかの毒性試験が同時に行われているが,全体の試験は同時期に行われていない)場合にその効果をランダム効果で扱い,金属の相加,相乗,拮抗作用をを統計的な交互作用で検定した,というものです。アプローチ自体ははっきり言って目新しくないのですが,こういう風に解析している論文をほとんど見ないので,こういう方法ありますよ,という紹介という意味でも書いたという感じです。方法自体はこの方法を使って,Iwasaki et al. (2013, Aquatic Toxicology)と同様に曝露指標(溶存態濃度,フリーイオン濃度,フミン酸に吸着すると推定された濃度の3つ)の比較を行っています。こういう(モデル選択的な)ことも同時に行えるというのも,まぁ回帰モデルの枠組みにのせてやる利点かとは思います。


結構思いつきで始め,特集号用に勢いで書き上げたのですが,査読者のコメントも含めて色々参考になりました。金属のQSAR的なアプローチがやられているのも初めて知りましたし。なにより,特集号だからまぁたぶん大丈夫だろうと思っていたら,査読者の一人*2にコテンパンにされ最初は(再投稿可の)リジェクトもらいました。特集号といっても色々あるのかもしれません。あと,最近データをちゃんと公開するような仕組みがET&Cにもできたようで,付録に解析に使ったデータとコードを載せています。この研究,個人的にはサブワークなのですが,結構意識して分かりやすく*3書いたので,ECOTOXな人たちにもちゃんと読んでもらえるとうれしいなと思います。

Farley, K.J., Meyer, J.S., Balistrieri, L.S., De Schamphelaere, K.A.C., Iwasaki, Y., Janssen, C.R., Kamo, M., Lofts, S., Mebane, C.A., Naito, W., Ryan, A.C., Santore, R.C. & Tipping, E. (2014) Metal Mixture Modeling Evaluation project: 2. Comparison of four modeling approaches. Environmental Toxicology and Chemistry, n/a-n/a.

あと,同じく特集号に共著で一本。FarlyとMeyer以降の著者順にほとんど意味はないです(が,各グループごとになんとなくの実労働時間を考慮して一応順番はつけているのかも)。ここのKamo&Nagaiモデルも含めて,USGS,CEH,HDRの4つのBLMの比較がまとめられた論文です。色々書くと長くなるので簡単にまとめると,各モデル色々自由に作られているのですが,おおまかにいうと,予測性はあまり変わらず,モデルの中身を比較・検証するほどのデータが現時点ではないです。という感じ。しかし,この蒼々たる中に入っていられるのはうれしい限りです。でも,モデル開発的には,ちょっと出遅れている感があるんですよね。KMさんよろしくおねがいします。

*1:今年はこれで終わりです

*2:コメントからするにおそらく大御所N先生

*3:なので,わかっている人にはある意味くどいかも