A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Boosted regression treesを使った論文

Waite, I.R., Kennen, J.G., May, J.T., Brown, L.R., Cuffney, T.F., Jones, K.A., Orlando, J.L., 2014. Stream macroinvertebrate response models for bioassessment metrics: addressing the Issue of spatial scale. PLoS ONE 9, 21.
Waite, I.R., Munn, M.D., Moran, P.W., Konrad, C.P., Nowell, L.H., Meador, M.R., Van Metre, P.C., Carlisle, D.M., 2019. Effects of urban multi-stressors on three stream biotic assemblages. Science of the Total Environment 660, 1472-1485.

とあるPJでもこういう話が出ているのですが,おそらくそれとは独立に(多分)リサーチゲート*1が推奨してきた論文。Waiteさんは,Boosted regression treesを使って,水生昆虫を中心とした河川水生生物の物理化学的な要因に対する応答を調べた研究を結構な数出している。そのうち,適当に選んだのが上の2本。いずれもざっと読みで,Boosted regression treesの詳細についてはボクは説明できないので,回帰木などのキーワードともにググれば,内容がわかりそうなサイトが見つかると思います*2。すごく適当にいうと,ランダムフォレストのお友達みたいなイメージ。
2本読んで思ったのはほんとに素人な疑問をメモしておく(ほんとにイメージなので誤解している可能性大です):

  • こういうモデル解析した際に,オリジナルの濃度影響関係がきちんと推定できるのか?という点。
    • 疑似データなんかでやってみればいいのかもしれませんが*3,都市河川とか他の要因が存在(ある程度相関して存在)する中では,単一の要因の影響をpartial dependency plot(PDF)で見ることは,総じて影響の”傾き”がゆるく見積もられないか?というのが気になった。結局,影響を説明変数間で分け合うってるんじゃないかなとも思ったけど,説明変数を絞っている上の論文では,そういうことは起きてないのだろうか。中身もよくしらんので,全然自信が無いのですが,これらの論文に出てくるPDPsを見てて大体大きな変化がないので,素直にこう思った次第。仮に,単一の要因のみをきちんとコントロールできた際に,見えてくる影響をPDPでは捉えられているのだろうか。
  • 結論としてその程度の定性的な結果なら”知ってます”という感じがする。
    • いずれの研究も,なんとなく個人的にときめかない。理由はいまいちわからないんだけど,これが実際の対策や管理にどう活用されるのかが,よくみえないせいかもしれない*4。すごくずぱっといってしまうと,研究にはなるがこういう”ゆるい”結論だと*5,結局使いどころがないというのが正直なところな気がする。異なる分類群ごとに選ばれる変数に特徴が出たりするのはおもしろいが,虫だけに着目したPLoS ONEの研究では同じ虫の指標なのに最終的にモデルに残る変数が微妙に違っているように見受けられる*6

繰り返しますが,完全に個人的メモです。

*1:もう記憶が曖昧だけど,少なくとも自分で検索はしてない!思い出した。STOTENの方の著者にDarenが入っていて,それで気になってチェックしたのでした

*2:ごめんなさい

*3:多分,R君がこのあたり詳しいのでそのうち聞いてみる

*4:著者にメールしてもおもしろいかも

*5:例えば,STOTENの最後の一文は,河川生態系に対する都市化の影響を減少させるには,様々な物理化学的要因に注意を払う必要がある。というオチ。We already knew that といいたくなる。

*6:本文では,結局予測性が良かった1つの指標の結果しか載ってない

川の環境目標を考える

川の環境目標を考える―川の健康診断

川の環境目標を考える―川の健康診断

今更ながら,「特定の河川や地点における「生態影響」を評価する方法はどんな方法があるのか」や「定まった方法はあるのか」という素朴な疑問をもとに,MTHSさんに教えてもらって,ざっと目を通した。詳細な方法論はまた別の本という感じだが,現状,とっかかりとなる考え方や事例は網羅されていて勉強になった*1。しかし,p38にある

基本となる調査・評価の方法については,まだ定められたものがなく,調査方法や指標の内容,重み付けやリファレンスの設定方法,乖離の程度を求めるためのデータ処理方法など検討すべき課題は多い。

という記述がすべてを物語っている*2。同時に試行することが大事とあるので,全体像を描きながら(妄想しながら),試行するしかないかなと思わされた。

*1:というか,リファレンスとの乖離度で評価するなど,個人的に進めてきた方法でよさそうということも確認できた

*2:という明確な文言を確認できたことも個人的に大きい

2018年の私的出来事振り返りと2019年の目標

とりあえず続けることが重要と考えて,今年も書いておきます。

  • (予想していたよりも)仕事が忙しかった(出張も多かった)。
    • といっても,周りにもっと忙しい人は沢山いるので大きな声では言えませんが・・・*1。「まったり論文読める日々」なんてものを勝手に想像していたのですが,そんな時間はないようです。PDの時と違って,ある程度自分の裁量で仕事の量をコントロールできる(はず)なので・・・というところなのですが。
    • ただ,昨年度から動き出した某プロジェクトなど,自分のやりたい方向の仕事ができているのは有り難いことに確かです。これはとても有り難い。
  • 論文は,一昨年の振り返りに書いた時点で受理されたいたものを除けば,国際誌4本(共著2本)を出すことができました。
    • 主著2本とも,研究取りかかりから長いことかかりましたが,きちんと出せて良かったです。主著の2本は昨年の目標にしていたので目標達成。いずれの論文もかなり魂の籠もった論文です。ES&Tの解説のようなものは,ここ,Environmental Pollutionの方はここをご覧下さい。前者は,コロラドに居た時からの積み残しで,解析終了から投稿までにかなり時間がかかりましたが*2,その分,査読は比較的楽だったと思います。後者も博士研究の積み残し。やっと出せて良かったです。Environmental Pollutionはちょっときついかなと思ったダメ元の投稿でしたが,うまいこと転んで良かったです。
      • Yuichi Iwasaki, Travis Schmidt, William H. Clements (2018) Quantifying differences in responses of aquatic insects to trace metal exposure in field studies and short-term stream mesocosm experiments. Environmental Science & Technology. 52(7): 4378–4384
      • Yuichi Iwasaki, Takashi Kagaya, and Hiroyuki Matsuda (2018) Comparing macroinvertebrate assemblages at organic-contaminated river sites with different zinc concentrations: metal-sensitive taxa may already be absent. Environmental Pollution. 241: 272–278.
    • 一昨年同様に共著で2本出ました。栗原さんの論文は保高さんに要請をもらって,主に統計解析の部分(+論文改訂)でお手伝いさせていただきました。Kさんのも投稿まで難産でしたが,良いとこに載ってよかったです*3
      • Momo Kurihara, Yuichi Onda, Hiroyuki Suzuki, Yuichi Iwasaki, Tetsuo Yasutaka (2018) Spatial and temporal variation in vertical migration of dissolved 137Cs passed through the litter layer in Fukushima forests. Journal of Environmental Radioactivity. 192: 1–9
      • Masashi Kamo, Yuichi Iwasaki, and Hiroyuki Yokomizo (2019) Much ado about interaction: A combination of linear processes yields non-linear toxic effects in chemical mixtures. Chemosphere. 219:89–94
    • 現在,1件国内誌に論文を投稿中*4。英語の論文を書かないといけないのですが,全然時間がとれていない状況。今年度中に1本は投稿したいところですが・・・。
  • 日本環境毒性学会からCERI学会賞を頂きました。
    • 弊所のサイトではこちら。化学物質評価研究機構さんのサイトもありましたので,参考までに(ここ)。結構個人的にぐっときたことも含めて,弊所のニュースレターに書いてあります(PDF)。是非ご笑覧ください。良い感じに仕上がっています(笑)関係者の皆様,ありがとうございました。今後も精進します。
  • まだしゃべれないことも多いのですが,徐々に研究の幅を広げつつ,徐々に某プロジェクトも本格始動し始めた。
    • 調査はそんなにしてないのですが,よく鉱山に行ったように思います。呼んで頂いたことも多く,嬉しい限りです。
    • 私がやることは,まずは研究レベルできちんと成果にしていくことでしょうか。

日常

  • 結構,家族旅行(海外だとデトロイト)に行った。
  • 息子との二人旅(山形と高知)も無事にこなせた。二人になったらなったで,ママママじゃなくて結構すっと大人になる。
  • 保育園のイベントで息子がやった大きなかぶのおじいさん役が良かった*5
  • 今年,後半頃から観劇を再開した
    • モメラス,マームとジプシー(正確には藤田貴大か),堂々としたブスはほぼ美人,オフィスマウンテンの4つ。個人的には,オフィスマウンテンが一番良くて,2番目はモメラスかな。1ヶ月に1回くらいのペースで行ったのは結構個人的にも驚き。

という感じでしょうか。

今年は,

  • 仕事量をうまく制御しつつ*6,動き出した研究の成果を徐々に出していきたい
  • 北海道のお仕事の論文化は目指せ今年度中。その後,せめて1本くらいは書きたい。
  • SETAC Helsinki の年会に参加して,発表する*7
  • 今まで1回も行ったことがない日本の学会にも参加したい*8
  • 英語の総説・・・*9

ということで,本年も何卒よろしくお願いいたします。

*1:きっとボクの心のもち様と懐の大きさが問題な気がします

*2:察してください

*3:ボクとKさんの間にも見えない壁があるんだなぁというのが分かって個人的にはとても勉強になりました。ボクが良い方向に協力できたかは不明ですが・・・

*4:内容は3月の水環境学会で発表します

*5:なんというか,3歳にしてよく結構な人数に人前に出てできるよね?と感心しました

*6:去年も同じ事を書いていた・・・

*7:これは目標ではないですが

*8:去年は依頼ですが,資源素材学会に始めて参加して発表しました

*9:一応書いておく:実は2016年の目標になっていたのですが,全然ですね。。

問いかける技術

『書を捨てよ街へ出よう』をふらっと探しに行った時に見つけた本。あんまりこういう本は読まないんだけど,なんか買ってしまった*1。キーワードは謙虚な問いかけ。アカデミックな人が書いているので,いわゆるそっち系の本的に膨らまされすぎてないところも個人的には好みでした。書いてあることはその通りって感じでボクの考えとも近いので読みやすかったです(色々反省しなきゃなぁと思うこともありタメにもなりました)。比較的実例はあるのですが,じゃあ実践どうするの?ってなると,そこはやはり自助努力で…という感じで,エビデンスを基に考え方を吸収するという意味では分かりやすくて良い本だと思います。Humble Inquiry: The gentle art of asking instead of tellingという邦題も個人的には好き*2

*1:というような出会いがあるので本屋に行くのは好き

*2:Peter ChapmanがHumbleだったという追悼コメントがあったけど,やはりHumbleというのはそういう意味なんですね。という確認も個人的にできた。

底生動物のサイズスペクトルと酸性河川

Pomeranz, J.P.F., Warburton, H.J., Harding, J.S., 2019. Anthropogenic mining alters macroinvertebrate size spectra in streams. Freshwater Biology 64, 81-92.

久々に本。Will Clementsのラボに修士で居たジャスティ*1の論文。サイズスペクトル((分類群によらない)サイズと個体数の関係)がpHや金属濃度に応じてどう変わるかという研究。こういう研究
あまり読んだことがなかったので読んでて面白かった。要点だけだと,AMDの影響が大きい河川ほど,個体数が少なく(当該関係の切片が減少),サイズと個体数の関係の傾きが緩くになる(これは,主に大きな個体がいなくなることに起因),という話。サイズスペクトルを調べると,群集というか食物網の構造にどういう変化が起こっているか,今までのデータでは見えなかったものが見えてきそうで楽しそうだなぁと思った。AIとかで自動化されるともっといいかもしれない*2。少し本論とはずれるけど,

Hogsden, Winterbourn, and Harding (2013) showed that both the quantity and quality of basal resources was not a likely limiting factor for primary consumers across an AMD gradient, lending support to our metabolic cost hypothesis.

とか結構面白い記述があったように思う。ジャスティンにとっての最初の論文だと思うけど,よく書けている。AMDあたりで必要になった時はまた読み直したい。

*1:イケメン

*2:ソーティングの苦労からは抜け出せないかもだけど。。

環境リスク研究におけるweb調査の有効性

岸川洋紀, 村上留美子, 藤永愛一郎, 内山巌雄, 2018. 環境リスク研究におけるweb調査の有効性. 日本リスク研究学会誌 28, 3–11.

アンケートしたいなぁと思っていたところに,ちょうどリスク研究学会誌が届いて,目を通した。web調査とインタビュー調査の比較で,それぞれの特性が出るという話。入門的な話も書いてあって勉強になりました。それぞれの利点と欠点はまぁそうだよねぇ,という感じですが,きっとこれ数十年後とかにはまた違う様相になっているのでしょうね。気になったところは,調査年度が違うところ。地震とか原発あたりの質問の感触が変わりそうだなと思った。すなわち,方法論の違い以外に,調査年度の効果が見落とされている気がした。ざっと読んだ限りでいうと,自分の対象とする母集団がどんな集団かによってベストな方法は変わりそうだ,という(ある種至極当たり前な)話と,結局,真の母集団が分からないような状況だと方法論の比較も,単なる比較止まりになってしまって,ちょっと味気ないなぁと思った。論文とかにまとめることを考えると,「一般」を推論するというよりは,Web調査ならWeb調査の母集団は反映しているだろうから,その中での仮説検証を考えておくのがよいのかもしれない。

コンビニ人間

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

あっという間に読了。すーっと読めたので,読みやすいし,独特で面白いのは確か。ただ,個人的にはオチがもう一歩という感じだった。