A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

野外で特定の化学物質の影響を評価したい場合

あくまでボクの中の頭の整理です。野外で特定の化学物質の影響を評価したい場合を考える。

  • ある地点の生物相が対照地点のそれと同様である場合に,「当該物質の影響はほとんどないと判断する」
  • ある地点の生物相が対照地点のそれと明らかな差異がある場合に,「当該物質の影響だと判断する」

の2つの異なる状況を考えた場合に,どちらの推論が尤もらしい可能性が高いか,と考えると,前者の方が正しく推論できる可能性が高い印象をなんとなく感じているのですが,おそらくそれは,特定の化学物質濃度が高い地点は,他の影響要因が交絡している可能性が高い,からだとふと思った。都市河川とかまさしくそうで,亜鉛濃度が高いところはBODが高い可能性は高いし,他の物質も流入しているため,誰が犯人かを決定することは難しくなる可能性が高い。一方で,亜鉛濃度の高い地点が他の影響要因が緩和されている(それによって見かけ上影響がないように見える)可能性も考えられるけど,おそらくその可能性は,一般論として,後者よりは低いんじゃないかと思う。あくまで現時点の(私的な)整理として。

最近聴いているのを列挙しておく。chelmico。個人的には鈴木真海子さんから入った感じ。

Deep green

Deep green

EP

EP

POWER

POWER

蓮沼執太フィルの新譜もよい。
ANTHROPOCENE(アントロポセン)

ANTHROPOCENE(アントロポセン)

toconomaYoutubeフジロックで聴いて知った。よい。
TENT

TENT

最後に,superorganism。フジロックも賛否あったけど,ボクは好き。ボーカルがあおくて,Fワード言いまくってたのもボクは好き。
SUPERORGANISM/JEWEL CA

SUPERORGANISM/JEWEL CA

Stream mitigation banking

Lave, R., 2018. Stream mitigation banking. Wiley Interdisciplinary Reviews: Water 5, e1279.

Freshwater Scienceの学会の時にお話を聞いたLaveさんのStream mitigation banking入門記事。ざっと読みで法律関係のあたりとか正確ではない部分があるとは思いますが,自分用のメモとしておいておきます。Stream mitigation bankingを直訳すると,河川緩和銀行,と意味が分かりにくいのですが,Clear Water Act文脈で,開発プロジェクトがその影響をオフセットするため作られた仕組みのよう(カーボンオフセットとか排出源取引みたいなを勝手に想像しています*1)。営利団体(会社)であるMitigation bankが任意の修復プランを立てて,それが承認されれば,水圏生態系への影響のオフセットが必要な会社などがそのクレジットを購入するという仕組み。全然知らなくて,仕組みとしてすごくおもしろいと思うんだけど,今のところ,河川形状や機能といったの物理環境な側面ばかりが重視されて*2,生物学的や化学的な側面での評価や対策が十分でなく・・・。という感じ。途中から聴き始めてよくわからなかったLaveさんの話も基本こういう話をされていたと思う。もうちょっと深掘りしたいけど,ひとまずこの記事ではこんな感じか。

*1:ただ,WCAと開発事業の結びつきがいまいちよくわかってない

*2:実施後の評価がしやすいというの理由の1つのよう

環境基準のThe good, the bad and ugly

Chapmanさんおそらく最後のコメント論文(といってもShort Commentary)を眺めて,ESPRの記事も見つけたの合わせて,メモ。

Chapman, P.M., 2018. Sediment remediation can include no action. Ecotoxicology and Environmental Contamination 13, 1–3.

まず,ブラジルの生態毒性学会?のようですが,基本汚染土壌のレメディエーションにおける評価に関するコメント。受理が亡くなられた後なので,もしかすると最後まで面倒見れていない論文なのかも。雑多に拾い出してみると:

  • contaminationとpollutionの使い分け
  • 底質環境基準*1や他の基準は,保守的な(安全側の)傾向がある。基準より低ければ懸念される影響はない*2といえるが,基準より高いと影響がある可能性が懸念されるだけで(of possible concern),明白な影響が予想されるわけではない(not certain concern)。
    • 訳が微妙ですが,これ重要で,ESPRの論文が引用されていたのでそれも読むことにしました。
  • contaminated sedimentがpolluted sedimentなのかどうかを決めるには(基準値による判断だけではなくて)追加の生物学的評価が必要。
  • メディエーションが必要と判断するための4つの要因は,ヒト健康リスク,急性毒性(生態毒性),生物濃縮の可能性,より深い汚染された底質の撹乱の可能性と曝露としている。
    • なぜ急性毒性だけなのか,ちょっと不思議ではある。
  • 簡単な場合分けも書いてあるけど,おそらくポイントとしては,no actionもありうるよ,という話だと思う。

Chapman PM (2018) Environmental quality benchmarks: the good, the bad, and the ugly Environ Sci Poll Res 25:3043-3046 doi:10.1007/s11356-016-7924-2

環境基準(原文では,Environmental quality benchmarkなのでEQBと訳します)の活用方法について,良い点,悪い点,醜い点についてChapmanの整理が載っています。環境基準は便利だけど,完全ではなく,評価や意思決定に必要な生物学的・化学的情報を提供できる完全で単一なツールも存在しない,というのがポイントでしょうか。かなりえいやでまとめましたが,いつもどおりメモとして:

  • 良い点の段落で議論されていること
    • EQBを超えていなかったら無視できるconcernで,超えていたらpossible concern*3
    • 適切に導出されたEQBは,化学物質や物理的・生物的ストレッサーを含む潜在的なストレッサーを特定するのに役に立つ。
    • EQBのみで最終的な意思決定をすべきではなく,EQBの不確実性や他のストレッサー(による影響)も考慮すべき
    • 希少種などでない限り,我々は個体群や群集を保護しているということを認識しないといけない。
    • 場所特有のEQBを導出することは”よい”ことじゃ。
  • 悪い点で議論されていること
    • 悪い誤解は,EQBは絶対的なものだという認知,EQBのベースとなっている室内毒性試験が現実の世界における結果を提供しているという思い込み,相関は因果だという思い込み(EQBの超過が生物影響を説明する),EQBがすべての生物個体を保護するという思い込み,の4つ。
    • 具体例が論文を引用しながら紹介されている
    • 室内試験もそれ本来のばらつきがある。
    • Burton先生も室内試験ベースのガイドラインは過度に安全側だといっている*4
  • 醜い点で議論されていること
    • EQBの不確実性には4つの元があって,ヒューマンエラー(試験の時のQA/QCとか),不十分な知見,現実世界の単純化,確率性(自然変動)。最後のはコントール不能。真ん中の2つはエビデンスの蓄積で減少させることができる。
    • EQBの修正の機会が限られているのはuglyだ。
    • 環境の複雑さは認識され,配慮されなければならない。無視されたり単純化されたりすべきではない。
    • EQBはスクリーニングには使えるが,他のエビデンスを考慮しないでdefensiveな意思決定には使えない。
      • 超えていても実際の生物学的な影響があるとは限らない

*1:細かくはいろいろありますが,guidelineとかbenchmarkとかすべて基準と訳しています

*2:not likelyなので正確にはなさそう

*3:訳しづらいのでそのまま

*4:ただし,底質が念頭にあると思う

環境アセスメントとは何か

環境アセスメントとは何か――対応から戦略へ (岩波新書)

環境アセスメントとは何か――対応から戦略へ (岩波新書)

今更ながら拝読。個別事例から全体論を推論する際の展開が少し強引に感じる箇所*1や「これエビデンスあるのかな?」という箇所が見受けられて,気になったけど*2,概念や理想的な原則はとてもよく分かったように思う。評価事例に具体的な数値なんかが出てくると個人的にはもっと具体的につかめてよかったように思う(けど,新書なのでこれくらいの内容がちょうどよいとは思う)。スコーピング,情報公開と公衆参加が大事というのもよくわかりました。ちょっと,この文脈で自分の事例も整理してみたい。環境影響だけではなくて,社会経済影響も考えて,持続可能性アセスメント(Sustainability Assessment)なんて話も軽く触れられてたのも興味深かったです。

*1:例えば,p104「自主的に取り組めば,その効果はあることが示された」

*2:ボクの個人的バイアスによる想像だと,著者の長年の思いがここにこもっているのかもしれません

Armitage et al.

Armitage, P.D., 1980. The effects of mine drainage and organic enrichment on benthos in the river nent system, Northern Pennines. Hydrobiologia 74, 119-128.
Armitage, P.D., Blackburn, J.H., 1985. Chironomidae in a Pennine stream system receiving mine drainage and organic enrichment. Hydrobiologia 121, 165-172.
Armitage, P.D., Bowes, M.J., Vincent, H.M., 2007. Long-term changes in macroinvertebrate communities of a heavy metal polluted stream: The river nent (Cumbria, UK) after 28 years. River Research and Applications 23, 997-1015.

RIVPACSあたりの本にも出てくるArmitageさんからリサーチゲイト経由で,「君の論文(Iwasaki et al, 2018 Environmental Pollution)読んだけど,興味あるかもだから論文送るね」と送られてきた論文たち*1,なんとなく事例研究に留まっている印象をうけました。2007年の論文は,long-termといいつつ,1976年と2004年の調査結果の比較で,亜鉛などの金属濃度は下がっておらず,底生動物相もほとんど変わってなかったよ*2,という話でした*3

*1:)これはとっても嬉しいことです)。2007年のものは手元に持っていた。確かにリンを測っているんだけど,サイトの特性が入り組んでいて((詳細はきちんと理解できてないです

*2:細かい変化はある

*3:質問と合わせて,再度お返事書きたいところだけど,思いつかない。無念