A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Eco-epidemiology

Posthuma L, Dyer SD, de Zwart D, Kapo K, Holmes CM, Burton GA (2016) Eco-epidemiology of aquatic ecosystems: Separating chemicals from multiple stressors. Sci Total Environ 573: 1303-1319. DOI: https://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2016.06.242

タイトルにあまり意味はありません。DyerさんはP&Gの人。基本的にはLeoさんやDickさんらの既往研究をベースに野外調査データ(水質&水生動物)をこういう風に使っていきましょうよ,という総説のような感じ*1。以下は,結構意訳を含む個人的なメモ。因果については結構慎重にイントロで書いてあるのだけど,Discussionではちょっと言い過ぎじゃない?ってところも散見された。

  • 個別の物質のEC50などで描いたSSDを元に,msPAFを計算してそれをtoxic pressure potencyとして使う
  • 使用するデータでtoxic pressure potencyがそもそも一定の幅があることとそれと他の変数の相関*2を確認する必要がある*3
  • 個別物質の曝露と生物種の個体数の関係はいまいち見えなくても,複合で考えると(例えば重回帰分析)影響を検出できることがある。
  • 対照地点と設定しても,それが本当に対照地点と適当かも,測定した水質などによって検証すべき
  • 複合影響といっても,実は少ない数の化学物質が寄与している場合もある(Backhaus and Karlsson 2004)
  • 我々はこの論文では,prioritizationにフォーカスしている。
  • 広域のデータを使って,個別の地点における影響要因を探ろうとしている(岩崎感想)。
  • 当然だけど,SSDは万能薬ではない
  • 化学物質によるインパクトはここ数十年で減少しているが,現状の影響レベルに関する我々の診断は「さらなる努力が必要」。
  • Effect and Probable Cause (EPC) methodって何をやっているかが気になる(岩崎感想)。

De Zwart D, Dyer SD, Posthuma L, Hawkins CP (2006) Predictive models attribute effects on fish assemblages to toxicity and habitat alteration. Ecol Appl 16: 1295-1310. DOI: 10.1890/1051-0761(2006)016[1295:pmaeof]2.0.co;2

EPCのおそらく元論文。ざっと読了。ざっくりいうと,重回帰。ただ,結構色々やっている。”Probable” とcauseの前についているのがポイントなんだろうな,という感じ。でもきちんと,因果とは必ずしも関係ないけど,ここではこういう解析で出てきた結果をcausesという言葉を使うよ,という風にしている。日本版RIVPACSモデルとか誰か作ってくれないかなぁ。

*1:これ査読した人どういう風に意見したんだろう…という不思議な感じ

*2:交絡因子など影響を議論する際に重要

*3:まぁこれも当たり前の話ではある。何かの変数と強く相関する場合は,影響検出は難しい。多くのデータだとこのcovariationが少なくなるということも書いてあって,それは確かにと思った