A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

指標生物関係

浦部美佐子, 石川俊之, 片野泉, 石田裕子, 野崎健太郎, 吉冨友恭, 2018. 大学生アンケートによる水質指標生物の教育効果の検討. 陸水学雑誌 79, 1-18.

オンラインでフリーで読めます。結構痛烈な批判をされているけど,確かに学習や教育という面で指標生物をどう扱うかは難しいなと思いました。生物が水質の指標になるというのは,未だ魅力的なことだけど,ばしっと言い切るには難しいことも多く…。因果の話とかを突き詰めるともっと体系的な質問が必要だとも思うけど,個人的には指標生物の学習によって,環境への興味を喚起されたというのは救われる結果だなぁと思いました。以下の指摘も文章としては初めてみたように思う。

現在の日本では,化学的な水質モニタリングが技術的に容易になったこともあり,もともと判定のあいまいさを含む指標生物が水質研究の主要な手法として採用されることはほとんどなく,大部分が教育・啓発を目的として実施されていると思われる。このように,指標生物による水質判定は,今日では「水質の簡易判定」という本来の目的はほぼ失ったと言えるが(後略)

大垣俊一, 2008. 指標生物の論理. 日本ベントス学会誌 63, 56-63.

浦部さんの論文で引用されていた論文。こういう議論がオープンにされているのは有り難いことだなと思う。ポイントとしては以下。ただ,批判はしつつ,総じて前向きな展開を考えていると理解しました。

  • 指標生物は帰納である
    • 帰納的に指標生物は選定しているので,使用したデータの外側に適用すると,役に立たなかったり,そもそも適用不可の範囲が不明。
  • 指標生物は後件肯定である
    • いわゆる因果の話と理解。その種がそこにいたとしても特定の原因でそうなっている,と議論するのは難しい。
  • 指標生物は循環論である。
    • この点はちょっと指標生物の作成の仕方なんかに依存して変わりそうで,いまいちピンと来なかった。ただ,なんとなくの危険性は理解できる*1

*1:深く理解してないです