A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Iwasaki Y, Hayashi TI and Kamo M. (accepted) Estimating population-level HC5 for copper using a species sensitivity distribution approach. Environmental Toxicology and Chemistry

一年ほどまえに,SETAC North Americaで発表した結果を書いた原稿がET&Cに受理されました。「生物利用可能性を考慮しないと,許さないわよ」という査読者の対応に苦労しましたが,きちんと正面から戦った結果,なんとかなったのは,大変勉強になりました。
内容は,個体レベルの種の感受性分布(SSD)ではなく,個体群増殖率が1になる濃度を使って個体群レベルのSSDを描き,個体群レベルのHC5(95%の種個体群を保護できる濃度*1)を,野外の底生動物結果や個体レベルのHC5と比べてみたという感じです。環境基準の目標が個体群レベル以上であることを考えると,個体レベルのSSDよりも,このアプローチの方がよりその目標にダイレクトに関係するエンドポイントで評価できると言えると思います*2。思ったより結果は綺麗ではなかったのですが*3,データの少なさや生物利用可能性など色々なことを考えると,まぁこんなものなのかもしれません。結構地道な作業ではありますが,こういう研究も地道にやっていきたいと思っています。共著者の林さん,加茂さん,いつもありがとうございます。

*1:もちろん統計的な推定値です

*2:ただ,労力の問題やデータの少なさの問題から,実際の評価に使うのはまだ大分智恵が必要な状況ではあります

*3:個体群レベルのHC5は,個体レベルのHC5よりも高く,野外データから推定した安全濃度と一致するという仮説