A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Hanson & Stark. 2012. Comparison of population level and individual level endpoints to evaluate ecological risk of chemicals. Environmental Science & Technology 46:5590-5598.
Hanson & Stark. 2011. An approach for developing simple generic models for ecological risk assessments of fish populations. Environmental Toxicology and Chemistry 30:2372-2383.

HansonさんのES&Tの論文を読む。色々出した後なので,ちょっと同じような内容なんじゃないかと思いましたが,なかなかキャッチーな内容に仕上がっています*1。出来が良かったのか,提出からほぼ1ヶ月でアクセプトになっています。個体レベルのLC50やNOECに安全係数をかましたPNECと個体群モデルから求めたPNEC(決定論的なモデルでλ=1となる濃度と,ETCの論文で導き出した経験式を使って求めた濃度)を,確率論的な個体群モデルから推定される絶滅リスクと比較した研究。個体レベルの指標から求めたPNECは概ね予防的だけど,複数の物質でその度合いを見るとその度合いはかなりばらつくのに対し,個体群レベルの指標の方はそのばらつきが小さい。という結果。まぁ,普通に考えて特に目新しいことはないのですが,こうやって個体群モデルの有用性を主張することのおもしろさが評価されたのだと思います*2。2種の魚類を対象としているのですが,それらの種を対象とした長期間の毒性試験がないので,他の種を対象とした毒性試験の結果を利用していることがミソです(評価結果の絶対的な意味は薄いが,手法間は比較できる)。ET&Cの論文も一度ちゃんと読んでみてもいいかもしれません。

*1:いや,ほんとアイデア一つですね。別にアイデアがすごく新しいというわけではないですが

*2:まぁ,それはHansonさんが地道に個体群モデルな研究をされてきた成果ではあります