ほんとうの「食の安全」を考える―ゼロリスクという幻想(DOJIN選書28)
- 作者: 畝山智香子
- 出版社/メーカー: 化学同人
- 発売日: 2009/11/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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主要なメッセージは,多種多様な食品からなるバランスのとれた食生活を送ること。これは,リスク分散にも繋がる。以下は個人的に気になったところのメモ。
- いわゆるリスク評価の許容値を求める話が第一章から出てきて,結構重めの用語が普通に出てくるので,やられる人はやられそう。ボクは平気でしたが。
- タマネギのリスク評価の部分は理解できるんですが,結局何が伝えたいのか?と考えると,「天然のものにもリスクがある」と同時に,素人からすると「リスク評価って使えるの?」って思いそうで結局使いませんでした。フェンプロパトリンの例を代わりに使いました(感謝)。
- 個人的には,付表1が目から鱗でした。平均曝露量を50%の発がんを誘発する濃度で割った値(HERP)を色んな食品や化学物質を対象に計算し,ランキングしたもの。3位にビール257ml。上位のほとんどがふつうの食べ物や天然物。気にするとすれば,ラットまたはマウスの試験結果を直接利用しているので,人とラットとの違いですが,それにしても目から鱗でした。
- 不確実係数の記述については下記参照。
- 健康食品*2の表示については,科学的な証拠を網羅的に集め判断しているという海外の話があった。もちろん,それは真っ当でよいと思うのですが,「決定的な証拠はないが,〜は〜のリスクを削減するかもしれない」という表示ができたらと企業が期待して申請した結果,「〜かもしれないことを示唆するきわめて限定的で予備的な研究がある。FDAはこの主張を支持する科学的根拠はほとんどないと結論した」というのは,夢がなくて淋しいなぁと思ったり*3。
- トマトを例にした,化合物のお話(コラム9)も良かったです。
- 非常に細かいですが,曝露量をADI(一日許容摂取量)と比較することは不適切だといいつつ,TDI(耐容一日摂取量)と比較されていたのが気になった。