A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

早坂大亮, 永井孝志 & 五箇公一 (2013) 農薬による生物多様性影響評価の重要性 : 個体評価から群集評価へ : 生物多様性に配慮した農薬管理の在り方. 日本生態学会誌, 63, 193-206.

今更ながら拝読しました。農薬とメソコスム中心の話ですが,楽しく読みました*1。さて,まぁ基本的に個体レベルの毒性試験から,種の感受性分布と多種の実験生態系試験(メソコスム)の話が展開されているわけです。とても良い解説論文?だと思います。一点気になったのは,NOEC communityのところ,折角群集で試験したのに,結局統計学的有意性で決めてしまうのね,という気になりました(まぁ難しいところではあるのですが)。あと個人的に興味深かったのは,以下の箇所:

生態系の一部を隔離した状態で実験が行われるため、必然的に自然界では想定されにくい隔離生態系固有の、外部の自然環境とは異なった動態を示してしまう、すなわち実験開始時点ではメソコスムと外部の生態系の組成と構造がよく一致しているが、時間経過に伴い両者の類似性は離れていく、という現象が生じる点は十分に考慮して評価に用いる必要がある。

CSUでウィルの実験を見たりやってみて思ったのは,この手の実験は時空間的スケールはかなりキモで,そこにどう落とし前をつけるかが重要に思っていたので,まさしく「あーやっぱ似たような問題があるのですね」という感じ。外からの移入とか外への移出とか,これ結構現場の状況を考える上で重要だと思うんですよね。

*1:しかし,早坂さん論文出し速度はすげぇっす