- 作者: 町田康,いしいしんじ
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2012/10/25
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (2件) を見る
外から提供されるものが多すぎて,自分のほんとうの欲求に気づくまでにいたらないという。(中略)提供されるから飛びつくんだけど,そんなものほんとうにやりたいのかと聞かれたら,絶対にそうだと力強く答える人はいないと思うんですよね(p73-74)。
僕も,大人になってから,人と人とがわかり合うのは不可能であるということを身にしみてわかってきました。
通じないなら,通じないままにしておけばいいのに。だいたいの人は,なんとか場を成立させようとするでしょう。照れてふざけたり,妙におおげさな対応をしたりするのは,通じないことを認めたくない,回避したいからなんですよね。でも俺は,通じないということはきっちりと認めて,そのままにしておくべきだと思いますよね(p131-132)。
そういう儀式って必要なんだと思うんですよ。それをほったらかしにしておくと,知らず知らずに自分のなかで乱雑さが増していく。
でも人間って,建前のところを堅固に作りすぎると,かえって本音の部分がスカスカになってしまうところがあると思うんです(p158-159)。
いい着想って,突発的に思えても,じつは,それまでの色々な蓄積のなかから必然的に生まれてくるものでしょう。その土台があるかぎりは,簡単に忘れたりはしないですよ(p255)。
空気を読むというのか言外の事情を読むというのか,そんなふうに相手の身になって考えることが,コミュニケーションにとっていちばん大切なのではないかと思うんです(p269)。
話はぜんぜんトンチンカンなんだけども,きょうもあのおばさんは元気だったなと思ったりもする。それもまた,コミュニケートにはちがいないんだと思いますよ。アイサツっていうのは,元来,意味がわかる必要がないんでしょう*2(p273)。
いまの日本人は,言葉というものをそんなに真剣に考えてないような気がする。実態は実態,言葉は言葉というふうに,言葉を一種のレトリックの遊びと考えているようなところがある(p280)。
大迂回をきわめると,宇宙に通じていくような気がする(p282)。