A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Meyer et al., 2012. Water chemistry matters in metal-toxicity papers. Environmental Toxicology and Chemistry 31, 689-690.

Meyerさんら,大御所が並ぶ"Letters to the Editor"。Jho et al. (2011)の論文の問題点を指摘しつつ,"The take-home message is: Water chemistry matter"(金属の毒性を評価するのに化学形態とかの化学が大切)と。結果的には問題ないというJhoさんからの回答もこの後に載っています。まぁ,Meyerさんらの主張は理解できるし,このご時世,nominal concentrationしか出していないのは確かにちょっとどうかなという感じですかね。

Tannenbaum, L.V., 2012. Is NexGen really the next generation of risk assessment? Integrated Environmental Assessment and Management 8, 213-214.

NetGenを良く知らないのですが,次世代のリスク評価(特に人健康)の方法論のようです。攻めてます。例えば,"Perhaps NexGen has a more limited capability to assist with overall health risk assessment (HHRA and ERA) than we realize."とか。全体的にほとんど理解できていないのですが,読んだ記録メモとして。

Batley, G.E., 2012. “Heavy metal”―a useful term. Integrated Environmental Assessment and Management 8, 215-215.
Chapman, P.M., 2012. “Heavy metal”―cacophony, not symphony. Integrated Environmental Assessment and Management 8, 216-216.
Hodson, M.E., 2004. Heavy metals - geochemical bogey men? Environmental Pollution 129, 341-343.
Duffus, J.H., 2003. "Heavy metals" - A meaningless term? Pure and Applied Chemistry 75, 1357-1357.

"Heavy metals"(重金属)という言葉を使うなよというChapmanのキャンペーンに対して,Batleyさんが「えー,ボクずっと使ってきたんだけど,ちょっと考えてみたわ。いやでも,良い言葉が見つかるまで使ってもいいんじゃない?」というやりとり。英語の表現がよく理解できるわけではないけど,Champmanの回答はかなりおもしろいというか変わった感じになっている。Hodson (2004)の論文タイトルは「重金属−地球科学的なやっかいなやつ」なんてタイトル。で,結論として,どうすればいいか,まだちゃんと理解したわけでないけど,「Duffus (2003)を読んで,適切なものを考えなさい」というのが,Hodson(2004)の主張*1。手元にあったEdやTonyの論文を見ても,確かに"heavy metals"は使われていなくて,metalsとかtrace metalsとか。
個人的には,そんなに気にする必要はない気もするのですが,広く使われている言葉とはいえ,確かに定義が崩壊している言葉を積極的に使う理由はないので,ちょっと自分なりの答えを検討してみます*2

追記120405
上の論文,Duffus 2003を読んでみました。以下,あくまでボクの理解です(外している可能性があります)。"heavy metals"は色々と定義されている,そもそも"heavy"と比重*3で分類する御利益はない,毒性や生態毒性について我々の知見は限られている,ことから,現時点では化学的な周期表をベースに分類がなされるべきだと主張しています*4。ということで,周期表をベースにした分類(s blockとかd blockとかってやつ)と,Lewis acid behaviorをベースにした分類が提案されているという感じです。ただ,この分類がロバストなものかというと,そうでもないようです。
後者の話は、最近読んだBLMのaffinity constantの話でも出てきたので,ちょっとおおっと思い,かつ,化学側の話を理解するのも大事だなぁと改めて思いました。良い勉強になりました。とにかくまぁ"適切に"分類すること自体はなかなか難しいという話に落ち着いてしまうのですが,heavy metalsの定義は曖昧ということを考えると,個人的にはmetalsくらいにしておくのが無難かなという印象です。"heavy metals"を使う事で,実質的にどんな問題があるのかはよくわかりませんが,よくわからん言葉を使っているようでは科学は良い方向に進まないんじゃない?という主張はなんとなく附に落ちるものはあります。

*1:ちゃんと読んでないのですが,なんか命名が堅くてかっこいい感じではない様子。後で読みます。後全然引用されてないのがすごい気になる。まぁ基本的な用語なので,引用される機会がないのかもしれません

*2:上のSteveとの論文では,trace metalsという表現を使った

*3:でよいですよね?

*4:個人的にはこれはなんとなく同意できます