A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

底生動物のサイズスペクトルと酸性河川

Pomeranz, J.P.F., Warburton, H.J., Harding, J.S., 2019. Anthropogenic mining alters macroinvertebrate size spectra in streams. Freshwater Biology 64, 81-92.

久々に本。Will Clementsのラボに修士で居たジャスティ*1の論文。サイズスペクトル((分類群によらない)サイズと個体数の関係)がpHや金属濃度に応じてどう変わるかという研究。こういう研究
あまり読んだことがなかったので読んでて面白かった。要点だけだと,AMDの影響が大きい河川ほど,個体数が少なく(当該関係の切片が減少),サイズと個体数の関係の傾きが緩くになる(これは,主に大きな個体がいなくなることに起因),という話。サイズスペクトルを調べると,群集というか食物網の構造にどういう変化が起こっているか,今までのデータでは見えなかったものが見えてきそうで楽しそうだなぁと思った。AIとかで自動化されるともっといいかもしれない*2。少し本論とはずれるけど,

Hogsden, Winterbourn, and Harding (2013) showed that both the quantity and quality of basal resources was not a likely limiting factor for primary consumers across an AMD gradient, lending support to our metabolic cost hypothesis.

とか結構面白い記述があったように思う。ジャスティンにとっての最初の論文だと思うけど,よく書けている。AMDあたりで必要になった時はまた読み直したい。

*1:イケメン

*2:ソーティングの苦労からは抜け出せないかもだけど。。

環境リスク研究におけるweb調査の有効性

岸川洋紀, 村上留美子, 藤永愛一郎, 内山巌雄, 2018. 環境リスク研究におけるweb調査の有効性. 日本リスク研究学会誌 28, 3–11.

アンケートしたいなぁと思っていたところに,ちょうどリスク研究学会誌が届いて,目を通した。web調査とインタビュー調査の比較で,それぞれの特性が出るという話。入門的な話も書いてあって勉強になりました。それぞれの利点と欠点はまぁそうだよねぇ,という感じですが,きっとこれ数十年後とかにはまた違う様相になっているのでしょうね。気になったところは,調査年度が違うところ。地震とか原発あたりの質問の感触が変わりそうだなと思った。すなわち,方法論の違い以外に,調査年度の効果が見落とされている気がした。ざっと読んだ限りでいうと,自分の対象とする母集団がどんな集団かによってベストな方法は変わりそうだ,という(ある種至極当たり前な)話と,結局,真の母集団が分からないような状況だと方法論の比較も,単なる比較止まりになってしまって,ちょっと味気ないなぁと思った。論文とかにまとめることを考えると,「一般」を推論するというよりは,Web調査ならWeb調査の母集団は反映しているだろうから,その中での仮説検証を考えておくのがよいのかもしれない。

コンビニ人間

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

あっという間に読了。すーっと読めたので,読みやすいし,独特で面白いのは確か。ただ,個人的にはオチがもう一歩という感じだった。

野外で特定の化学物質の影響を評価したい場合

あくまでボクの中の頭の整理です。野外で特定の化学物質の影響を評価したい場合を考える。

  • ある地点の生物相が対照地点のそれと同様である場合に,「当該物質の影響はほとんどないと判断する」
  • ある地点の生物相が対照地点のそれと明らかな差異がある場合に,「当該物質の影響だと判断する」

の2つの異なる状況を考えた場合に,どちらの推論が尤もらしい可能性が高いか,と考えると,前者の方が正しく推論できる可能性が高い印象をなんとなく感じているのですが,おそらくそれは,特定の化学物質濃度が高い地点は,他の影響要因が交絡している可能性が高い,からだとふと思った。都市河川とかまさしくそうで,亜鉛濃度が高いところはBODが高い可能性は高いし,他の物質も流入しているため,誰が犯人かを決定することは難しくなる可能性が高い。一方で,亜鉛濃度の高い地点が他の影響要因が緩和されている(それによって見かけ上影響がないように見える)可能性も考えられるけど,おそらくその可能性は,一般論として,後者よりは低いんじゃないかと思う。あくまで現時点の(私的な)整理として。

最近聴いているのを列挙しておく。chelmico。個人的には鈴木真海子さんから入った感じ。

Deep green

Deep green

EP

EP

POWER

POWER

蓮沼執太フィルの新譜もよい。
ANTHROPOCENE(アントロポセン)

ANTHROPOCENE(アントロポセン)

toconomaYoutubeフジロックで聴いて知った。よい。
TENT

TENT

最後に,superorganism。フジロックも賛否あったけど,ボクは好き。ボーカルがあおくて,Fワード言いまくってたのもボクは好き。
SUPERORGANISM/JEWEL CA

SUPERORGANISM/JEWEL CA

Stream mitigation banking

Lave, R., 2018. Stream mitigation banking. Wiley Interdisciplinary Reviews: Water 5, e1279.

Freshwater Scienceの学会の時にお話を聞いたLaveさんのStream mitigation banking入門記事。ざっと読みで法律関係のあたりとか正確ではない部分があるとは思いますが,自分用のメモとしておいておきます。Stream mitigation bankingを直訳すると,河川緩和銀行,と意味が分かりにくいのですが,Clear Water Act文脈で,開発プロジェクトがその影響をオフセットするため作られた仕組みのよう(カーボンオフセットとか排出源取引みたいなを勝手に想像しています*1)。営利団体(会社)であるMitigation bankが任意の修復プランを立てて,それが承認されれば,水圏生態系への影響のオフセットが必要な会社などがそのクレジットを購入するという仕組み。全然知らなくて,仕組みとしてすごくおもしろいと思うんだけど,今のところ,河川形状や機能といったの物理環境な側面ばかりが重視されて*2,生物学的や化学的な側面での評価や対策が十分でなく・・・。という感じ。途中から聴き始めてよくわからなかったLaveさんの話も基本こういう話をされていたと思う。もうちょっと深掘りしたいけど,ひとまずこの記事ではこんな感じか。

*1:ただ,WCAと開発事業の結びつきがいまいちよくわかってない

*2:実施後の評価がしやすいというの理由の1つのよう