安野正之. 1995. 河川の汚染の生物指標の将来展望. 水環境学会誌 18:931.
渡辺直. 1995. 水生生物による河川の水質評価 : 歴史と課題. 水環境学会誌 18:932-937.
福嶋悟. 1995. 付着藻類の水質指標性. 水環境学会誌 18:938-942.
野崎隆夫 and 山崎正敏. 1995. 大型底生動物による河川環境評価法簡易化の試み. 水環境学会誌 18:943-947.
高村典子. 1995. 河川の重金属汚染を教える付着藻類. 水環境学会誌 18:948-953.
特集なので,各記事にみなさんの若い頃の顔写真が載っているのが良い*1。あくまで水質評価に水生生物を使っているというのが,タイトルから伺えるが,渡辺直さんの解説はするどくておもしろい。高村さんが金属の研究をしていたのは知りませんでした。野崎さんの記事も,色々細かい情報が載っていておもしろかった。以下は,個人的に気になったところを抜粋。
渡辺(1995)からの引用
影響をみるためには,生物によるほかない。生物学的水質評価は,行政的にももっとも大きな役割を本来担うべきものである。
(多様性指標について:引用者挿入)機械的に水質汚染の程度とするのではなく,生物群集が受ける影響を解析する手段の一つとして用いられるべきである。
汚染を含めて河川環境のどのような変化が,どのようなプロセスで生物群集に影響しているのかはほとんど分かっていない。評価法の細かい部分や使用する生物群に拘泥することよりも,研究者のやるべきことはいくらでもあるのである。
野崎・山崎(1995)からの引用
マニュアル(案)では原則として採集場所を瀬とした。(中略)日本では過去に行われてきた方法がいずれも瀬を中心とした調査であったため,岸辺などのよどんだ場所で採集した場合の指標性への影響が分からなかったためである。
できるかぎり種まで同定するという作業を繰り返すことが必要となる。その作業を経てはじめて,"科"の概念が自分の中にできあがり,その後は科レベルの同定は種までの同定より簡単であるということができるようになるのである*2。
そろそろ,単に生物指標の検討のみを行うのではなく,対象とする生物そのものの基礎的研究が必要な時期にきているのではなかろうか*3。