A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

De Laenderさんの論文をざーっと眺めてみる。雰囲気がいけている。いずれもあくまでざっくり*1

De Laender et al. (2009) Non-simultaneous ecotoxicity testing of single chemicals and their mixture results in erroneous conclusions about the joint action of the mixture. Chemosphere 76:428-432.

複合影響を調べる際に,同時に行われていない結果を使うと,(その違いがあらたなばらつきを生み出して)本来は相加的なのに,相乗と判断することになったり拮抗としたりするというお話。まぁそれはそうでしょう。ショートコミュニケーション。

  • 統計処理が正規分布なのが気になる。
  • この手の話ではよく濃度をEC50とかLC50で割って,その和を指標とするのだけど,これってどうなんだろうといつも思う。ちょっと文脈が違うかもだけど,割り算するなと,KBさんはよく書いてる。
  • こういうのを読むと,野外データから相乗とか相加とかを推測するのはそもそも無理があるだろうなぁと思った。

De Laender et al. (2007) An ecosystem modelling approach for deriving water quality criteria. Water Sci. Technol. 56:19-27.
De Laender et al. (2008) Comparison of different toxic effect sub-models in ecosystem modelling used for ecological effect assessments and water quality standard setting. Ecotoxicol. Environ. Saf. 69:13-23.
De Laender et al. (2008) Validation of an ecosystem modelling approach as a tool for ecological effect assessments. Chemosphere 71:529-545.
De Laender et al. (2008) Do we have to incorporate ecological interactions in the sensitivity assessment of ecosystems? An examination of a theoretical assumption underlying species sensitivity distribution models. Environment International 34:390-396.

ほぼ同じような生態系モデルを使った研究。メソコスム実験から得られたNOECと生態系モデルから出てきたNOECを比べる感じ。おもしろいことによくあっているというお話。一番下の論文は,SSDとの比較。生態系モデルってどうなん?と思っていたけど,De Laenderさんは,既往の文献値から"デフォルト"の生態系モデルみたいなのを使っている。時系列データからキャリブレーションするのではなく*2,代表的な季節変動を定性的に表現できればよしとして,モデルを使っているよう。影響は,急性試験の生存や成長データ。これだと,急性試験データから,モデルが走らせることができて予測ができるので非常に作業が楽になる。

  • NOEC*3を比べていることにミソがある気がする。事実上定量的ではなく,定性的な比較みたいになっている気がする。
  • プロセスベースの生態系モデルを使っているんだけど,あまり詳細なプロセスの記述や推定にこだわっていないところがおもしろいところであり,なんかちょっとなぁと思うところでもあると思う。
  • いずれにしろ,おもしろいと思う。EESは強調論文になっている。

*1:モデルの話もあーこんな感じでやっているんだなぁ程度

*2:これが大変。データをとるのも大変

*3:正確には濃度レベル