A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

読書メモ

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

食のリスク学―氾濫する「安全・安心」をよみとく視点

遅ればせながら,読み始めました。以下,適当にメモしていきたいと思います。読書会に参加すればよかったかも。読了前に書いていますので,読み進めるうちに修正が必要となるかもしれません。
全体的な感想として,大分記憶が曖昧になっているので自信がないのですが,昔の本に比べ,中西さんのリスクに対するすごく率直な感想が書かれていると思う。それが個人的には新鮮*1

  • リスクは重要な影響(エンドポイント)の生起確率でいいと思う。

RISK = (severity) × risk*2

ZSさんも言及していたやつ。riskはある一つの影響の生起確率のことで,RISKはいろんな影響を重篤度で重み付けたものとのこと。やはり,個人的にはわかりにくい+後述の理由により,実際最も用いられる(計算される),前者をリスクとすればいいと思う。あと,RISKとriskはエンドポイントが違うとも言えると思う。「寿命が短くなること」と「ガンになること」みたいな感じで。もちろん,個々のリスクの全体を考えることは重要なので,RISKの考え方は重要*3

  • 重篤度なんてそう簡単に決められるものではないと思う

RISKは安全問題全体を概念的に考える時には役に立つが,実際問題,重篤度の定義はかなり難しい。色んなリスクがあるなかでどうするか?特に,ヒトの健康保護と生態系の保全とかとなると,相当難しい。遠い将来,どうなるか分からないが,現時点では,「えいや」で重篤度を決めてRISKに統合するか,RISKに統合しないかのどちらかだと思う。ボク個人的には,前者には懐疑的。そういう意味で,この式は概念としては重要だけど,実際には…とは個人的には思う。

  • リスクは計算された値

社会政策として安全対策を行うには(中略)どのくらいリスクが減ったかということが重要になる(中略)このリスクは,その生起確率とその影響の重篤度を掛けた面積で決まります

リスクはほとんどの場合,実環境で測定したものでないことに注意が必要であると思う。実験結果等を用いて,机の上で計算されているものである。この場合,たいていの場合は,かなり安全側の評価が行われているので,実際の影響とのずれがあることに注意しないといけない。

  • 安全側の仮定

現実のがんにかかるリスクの数値よりも100倍くらい大きいと思ったほうがいいでしょう(p20)

どういう経験でこう述べられているのかは分かりませんが,おもしろい。

  • 情報が少ない場合,最初に厳しい対策が必要で,その後情報が集まれば緩和策も。

まさしくベイズ。こういう事例が増えてくればいいのに。

  • リスク評価と企業

きちんとリスクを証明しようとしないから,全部回収することになります。(中略)そんな評判を気にしてばかりいるメーカーがありますが,私はもっともけしからんと思っています。徹底的に費用をかけて回収するのはいい企業だ,というようになってしまうからです。

気持ちよい。色々見てしまうと「消費者側の不安があるから…」とかそういうところについつい気がいってしまったりしますが,リスクで判断することが良いのだ!という気持ち良い主張。こう言われるわけです。

  • 雑1

神経影響といっても,本当にささやかな影響で,これを問題にしなければならないのかと,私自身は疑問に思っています(p56)。

最初にも書きましたが,こういう感想が前の書籍に比べ,多い気がします?。あと,なんかこっそり愚痴っぽいところもあったりして,個人的にはそういうところがおもしろかった。

  • 雑2

一挙に認められるのも気持ちが悪い気がしていて(笑)

好感度があがります。

  • 第2章

全般的に,こういう話は初めて読んだので,目から鱗でした。何か言うとすれば,苦労されているせいか,高橋さんの話は微妙なしつこさがある気がします。おばぁちゃんにこの2章だけ抜き出して送ってあげたい感じ。高橋さんの「提案までだと思います(p91)」という言葉にあるように,どの世界も,ほんとわからないことだらけなんだなぁと思いました。あと,「「病気になる権利だってあらぁな」と言いたくなりますけれども」とか,高橋さんがとっても人間くさくて良いです。

みんなが満たされてしまったがために,ひどく奇妙な競争心が強くなっている気がします。それが安っぽい情報に踊らされる要素としてあるのではないでしょうか(p85)。

個人的に,おもしろい視点だと思います。

私は基本的に,プラスになるところには関係しませんと言っています。(中略)それでは金儲けにならないので,みんなが離れていきます。離れてもらって結構だけれど,その境目はすごく重要だと思っています。

このコメントもおもしろい。たぶん,金儲けには興味がないと言って良いのだと思います。

  • リスク評価とリスク管理を別にすることはあり得ません(p175)。

ボクも同意します。管理に必要な情報がリスク評価によって提供されるべきで,管理に使えないリスク評価をやっていても意味がありませんので。以下は,HYSさんの言葉ですが,その一方でリスク評価は利害関係者に中立でなければいけない。これを混同してはいけない。

  • リスク評価の専門家とは

ものごとを広く見て,こちらのリスクとあちらのリスクを比較することが専門
常に比較できるものをバックボーンとして出していく(p180)

*1:本としてそれが良いかはよくわからないけど

*2:RISKとriskを分けるために,敢えて英語のままだと思われる

*3:書いているボクもよくわからなくなってくる