A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Yoshikawa, S., Yanagawa, A., Iwasaki, Y., Sui, P., Koirala, S., Hirano, K., Khajuria, A., Mahendran, R., Hirabayashi, Y., Yoshimura, C. & Kanae, S. (2014) Illustrating a new global-scale approach to estimating potential reduction in fish species richness due to flow alteration. Hydrology and Earth System Sciences, 18, 621-630.

こんなにたくさんの著者の論文に入るの初めてですが,共著の論文が出ました*1。オープンアクセスなので,誰でもここからPDFを落手可能です。非常に個人的なことをいうと,K先生と同じ論文に名を連ねられて個人的にはかなり嬉しいです*2


さて,この論文では,[1] 流域レベルの魚類種数を流量あるいは流況と関係づけた2つの統計モデルと,[2] 水文モデルから出力された将来の流量を使って,将来どのように魚類種数が変化するか(おそらくもっときちんというと,変化する可能性があるか)を調べ,比較した研究です。[1]にも[2]にも不確実性があって,言ってしまえば,非常に際を攻めた論文と言えると思います。例えば,[1]に使われた統計モデルの1つは,ボクのやった研究(Iwasaki et al. 2012 Freshwater Biology)ですが,非常に個人的な見解を言わせて頂くと,予測に使えるようなモデルではないと思っています(今も)。実は,そういう使い方をされるのはいやだったので,論文自体にベストモデルの式を出すことは載せたくなかったのですが,共著者の意見で最終的には入っています。個人的には,というような葛藤がありながら参加した論文だったのですが,結果として学べたことは多かったかなと思います。

この論文から言えると(私が思う)ことを簡潔に言うと,「気候変動によって流量の平均値というよりは変動性が変わるので,平均流量のみを使った魚類種数予測モデルと,平均流量とその変動性を使った魚類種数予測モデルでは予測結果がかなり変わってくる」ということだと思います。問題は,どちらの魚類種数予測モデルが真っ当な予測値を出しているかは,わからないという点です(このどちらもダメな可能性も十分あります)。という意味でも,ここが際ですよ。というのが理解できました。また水文モデルの出力にも色々と課題がある,というのも事実です。


全体を通して学んだことは,協働するのは楽しいけど,やはりきちんと腹を割って話した方がよさそう,ということです。「水文モデル」グループと「流況と魚類種数」グループのコラボだったのですが,お互い分からないことだらけで*3,例えば,「なぜ魚類種数なのか?」という質問にボクなら「単に利用可能なデータがあるからです」と答えるのですが*4,水文な人たちは「なにかきっと重要な理由があるに違いない」と思われていたようです。こういうところを腹割って話してお互いに理解を詰めて行くのが大事だなぁと思いました。きちんと話し合わないと,(非常に微妙なところではあるのですがでも大事な)結論をどこまで強く言えるのか?という点が非常に曖昧なまま進んでしまうことになります。


とにかく,結果的に結構個人的には思い入れがある論文になったような気がします。興味ある方は是非ご一読ください*5。来年の生態学会あたりで,これ関係の企画集会とかできるとおもしろそうですけどねぇ。この研究は,このCRESTのプロジェクトの成果です。

*1:ちなみにボクは3番目にいます

*2:K先生と直接の絡みはほとんどないですが,独断と偏見による予想だと,確実に良い先生です

*3:ボクもまだ全然水文の方は理解していない

*4:魚類は大事とか色々文言はつけられますが,まぁそこは魚類に絞る決定的な理由にはならないので端折ったとして

*5:そしてこっそりやばさを教えてください