A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Backhausさんが来るというので「平成25年度化学物質の複合影響評に関する公開シンポジウム」に参加してきました。Backhausさんの話自体は個人的にそんなに目新しくなかったのですが,その後の話し合いも含めて何を考えておられるかが分かって,結構楽しかったです。それよりも日本人の発表者の方々の研究内容を個人的には聞けて良かったです。複合影響の評価でボクが感じた事は,

  • 無数の生物種や途方もない数の化学物質(とその組合せ)があること,モードオブアクションの推定が非常に難しいこと*1,使う統計モデルや解析によって,相加,相乗,拮抗の判断が代わりうること,の以上の点を考えると*2,複合影響の程度を”正確に”予測することはまだまだ困難。
  • ただし,EC50や予測無影響濃度などを使って,影響の寄与が大きいと思われるものをランキングすることはできる。おそらく複合影響をどう管理するかという点では,ここから話を始めるのが良いように思う。
  • もう一つpracticalな取り組みとして大事なのは,曝露としてありそうな(あるいは同時にサンプルに可能性が高い)mixtureの影響を明らかにしていくこと。何と何が同時に水中にある可能性が高いという情報は意外にない(生データまで見ればあるけど,そういう情報はほとんどの場合論文には載ってない)。
  • 以下は,さらにマニアックな個人的メモ:
    • 濃度相加(Concentration addition)か影響相加(Response addtion)あたりも含めて,統計解析の整理は必要。現状みんなが結構好き勝手やっている感がある。
    • CAかRAというのは(数式上の限界を置いておくと),すべて同じモードオブアクションか,すべてのモードオブアクションが異なるか,の両極端ということになる。それらの間でモデル予測が大きく変わらないというのは興味深いと,Backhausさんはおっしゃっていた*3
    • とまぁ色々あるのですが,とりあえず複合影響は難しい。Backhausさんはとってもいい人でした。一緒に短い論説?を書いたNiklasさんとも近いところで仕事しているとのこと。会えて良かった。

*1:濃度依存である可能性もあるし

*2:最後の点は除いて,他の点はすべてBackhausさんが繰り返し話していたこと

*3:なるほどと思ったけど,相乗とか拮抗とかはこれとは別の議論になると思う