A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

olfactory

McIntyre, J.K., Baldwin, D.H., Meador, J.P. & Scholz, N.L. (2008) Chemosensory deprivation in juvenile coho salmon exposed to dissolved copper under varying water chemistry conditions. Environmental Science & Technology, 42, 1352-1358.

銅が魚類の嗅覚作用に影響するというお話。かなり低濃度で影響がみられるので,レギュラトリーにも中も策されていてMeyerやDeforestさんから知って読み始めたけど,なかなか歴史ある研究テーマのようで,色々やられています。McIntyreさんの論文は*1,銅20ug/L曝露下においてelectro-olfactograms*2というのを測定して,硬度(カルシウム),アルカリ度(HCO3),DOC,pHを変えたときに,それがどう変化するかというのを調べている。急性毒性試験に比べて,これらの水質の影響は弱くて,おそらく嗅上皮(olfactory epithelium)にあるリガンドへの銅の吸着係数がエラに比べて高いせいかもしれない,という考察もありました。

Sandahl, J.F., Baldwin, D.H., Jenkins, J.J. & Scholz, N.L. (2007) A sensory system at the interface between urban stormwater runoff and salmon survival. Environmental Science & Technology, 41, 2998-3004.

ということで順序が逆なんですが,Sandahlさんの論文も読んでみると,捕食者の出す物質を感知して動きがとまるcoho salmonの行動が,銅の曝露によって攪乱される(動きがとまらなくなる)というのが綺麗に示されていました。この行動の変化が上のEOGと綺麗に相関していて,これを元により水質条件を変えたMcIntyreさんの研究が行われたんだろうなぁという感じです。銅の曝露によって,行動の変化の閾値濃度が高くなっているだろう,という仮説も示されています。行動実験の解析に使ったと思われる動画が付録にあって,これは綺麗な結果だなぁという感じです。おもしろい。

*1:イントロのcopper is neurotoxic to fishというのすら個人的に新鮮でしたが,まぁこれはボクが物事をしらないだけです

*2:EOG:これどうやって測るかまだちゃんとわかってないです