A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

以下,ボクの理解です。
重金属の存在形態によってその毒性は変化しうるので,重金属の全濃度や溶存態濃度が重金属の毒性を表す良い指標でないことは,古くから示されている*1。なので,生物利用可能性(生物摂取可能性)を考慮することは重要だというのは,世界ではかなり自明な議論である。

Meyer, J.S., 2002. The utility of the terms "bioavailability" and "bioavailable fraction" for metals. Mar. Environ. Res. 53, 417-423.

こう言った,エドが「的を得ている」と教えてくれた論文。つまり,Bioavailabilityは重要というところでは合意は得られているけれど,具体的な定義(フリーイオンだけとか,フリーイオン+溶存有機物との錯形成している重金属とか)は決着はついてないと。だから?この論文では,bioavailable fractionという言葉を使うのはやめようという主張。ボクの認識を確認できたけど,ボクの求める解はここにはなかった。
注意すべきは,硬度*2とか,pHとかDOCとかが時空間的に大きく変わらない環境を考える場合,bioavailabilityもそんなに気にすることはない可能性があること。要は目的依存。例えば,日本の環境基準を硬度依存で設定すべきか?という問いがあった場合,そんなに気にしなくてもいいじゃないだろうか,とボクは思っています。あと,急性毒性試験とかで確かに明確な結果は出ているけど,実際の環境ではどうなんだろうという少し疑問に思っています。野外ではないけど,先日アクセプトされた論文のDiscussionでもこれに関連する議論をこっそりしていたりします(状況証拠が少なすぎるので,可能性の一つとして提示しているだけですが)。
とりあえず,メモとして。

## 20120812
再読。Bioavailabilityという定性的な単語は水質パラメータが毒性を考えるが上で大事という状況を伝えるのに便利だけど,Bioavailable fractionというのは厳密に定義することが現状では不可能なので,使わないべきだ,というMeyerさんの主張*3。この論説の趣旨はここだけど,色々考察されていておもしろい。そして,実は結構言葉も選んでいるのではないか,とも思った(acute toxicityを入れていたりするところとか)。tissue residue的なアプローチでBLMのバックグランドを作った人?なので,そういう意図は伝わってくるけど,懸濁物質を結合している金属のところで,餌にくっついている金属とかにも一言触れているあたり,ボク的に好印象。

*1:ただし,おそらく比較的短期間の曝露(急性)に限られる?

*2:硬度なんて作ったのだれ?ボクは嫌いだとエドは言ってた

*3:てか,この論文の人だったのか,ベルギーの会議の時にちゃんと挨拶しておけばよかった。