A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

水危機 ほんとうの話 (新潮選書)

水危機 ほんとうの話 (新潮選書)

沖さん*1は個人的にとっても良い感じで,好きなのですが,この本はちと根気がいります。サインをもらったのが5月くらいだとして,そのままコロラドに持って行って少しずつ読んでやっと今日読了。いや内容はおもしろいですし,秀逸なのですが,本としては少し読みにくいというか挫折しやすい感じになっているのが,ちょっと残念かなと思います(おそらく,面識がなければ読了できなかったと思う)。人間くさくて,アイデアが詰まってて,なんというか博学感がでて,でも全部いれなので,ちょっと疲れるという感じです。なので,是非根気よく読んで下さい。水文学やグローバルな研究の醍醐味みたいなのも感じられて良いです。バーチャルウォーターの話とか。以下はあまり一貫性のない気になったところ。どちらかというと,バーチャルウォータ−とかキャッチーと思われる部分は話に聞いたことがあったので,下のメモには入ってないです。

  • 水問題が(中略)敵対的な行動をもらたしたケースよりは,融和的な行動をもたらした場合の方が圧倒的に多かったことが明らかとなった(p84)。
  • 少なくとも水と食料と(自然)エネルギーの確保が大事であり,しかもそれらがお互いに補完するような密な関係にある…(中略)…基本的には土地面積あたり,時間あたりに得られる量が気候条件に応じて地域ごとにほぼきまっている,という…(p136)
  • 観測された最大地点累積降雨量とその継続時間(p150:木口さんの御仕事)
  • せっかく様々な自然災害リスク情報が出されているのに肝心の受け手に届かない,届いてもなかなか避難しない,という現状である(p155)。
  • ここで肝心なのは,その三角の柱の石をどこに置くかを,3つの集落の代表者が集まって試行錯誤し,全員が納得するまで置く場所を変えていた,ということである(p162)。
  • これ以上の水供給や水害防御の安全性を求めるかどうかは,安心感とそれに関わる費用のバランスでのみ議論可能であり,価値感に直結する(p177)。
  • そもそも木がどれくらいの密度で生えていたら森林とみなすか自体も問題なのだそうだ(p197)。
  • 林流域の場合,ピーク時ですら,雨水の直接の寄与は1割程度で,9割前後は一旦浸透してから流出した水であるという結果が得られている(p200)。
  • 24時間かけてゆっくり流れれば洪水にならずに住むような場合でも,同じだけの水が川に集中し,1時間で流れるのなら大洪水となってしまう。これが都市洪水のメカニズムである(p204)。
  • 注目を集めることはないだろう。なぜか。生態系サービスという概念を前面に打ち出し,生態系の経済的価値をいくらかアピールしても,その損失を減らすのは防災と同じくマイナスを少しでもゼロに近づける行為であり,個人の利益の追求の中では後回しになるし,目に見えてプラスの効果が見えないという点では為政者の気も引かないからである(p262)。
    • 気候変動(地球温暖化)な問題に対する対比として書かれている文脈です。プラス効果という意味では理解できるのですが,全体としてちょっとピンと来なかったのでメモとして。
  • 「人類は死んだ方がましでしょうか?地球温暖化,あるいは地球環境問題を考えると」(中略)かといって「死んだ方がいいよ」とも言われなかったのでそのまま悩みを忘れたことにして生きていた(p264-265)。
    • これ好きです。沖さんの答えは是非本文を。
  • 開催すること自体が目的になっている会議が非常に多い(p266)。
    • ええ。
  • 渇水時になると実は人工降雨を実施しているという自治体が日本中で案外多いのだが(p278)
    • 知らなかったです。。

あくまで上は一部です。あと,本で使われた図はここでPPTとして落手可能です。

*1:と言うのが失礼ではないと信じたいが