A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Vijver et al. 2011. Response predictions for organisms water-exposed to metal mixtures: A meta-analysis. Environ Toxicol Chem 30:1482-1487.

重金属の複合影響のレビュー。おそらく急性毒性のみのデータを使っているはず。相加影響を仮定するモデルがよく使われるけど,重金属だと,拮抗や相乗と判断される結果が相対的に多いという結果。実務的には,相加または拮抗である結果が75%であったので,相加を仮定して管理するというのは,まぁまぁ悪くないでしょう(is often justified)というお話。低濃度で拮抗となる結果が多かったが,そのメカニズムの説明はできない(そういうのも含めて,メカニズムの理解が必要)。

  • 気になったこと
    • 統計的な有意性で相乗や拮抗を議論するのは限界があると思う。
    • そもそも,実測濃度/EC50(またはLC50)の和を計算するってので良いのか。そもそも使用しているモデルが不適切だと,結果が間違う可能性がある。この辺りは,様子を見て確認しておく必要がある。
    • 「単体vs複数で,影響が大きくなるのか小さくなるか」については議論なし。
    • あくまで急性。まずは急性でよいと思うけど,慢性にそのまま当てはまるかは,要注意。
    • Playle(2004)は読んでおいてもいいかも。

Vijver et al. 2010. Toxicological Mixture Models are Based on Inadequate Assumptions. Environ Sci Technol 44:4841-4842.

著者の視点(Authors' Viewpoint)としての掲載。上の論文の縮小版みたいな形になっている。タイトルが非常に挑戦的。今こそ,複雑な相互作用をに基づく重金属の複合影響モデルを開発に進むべきだ,とかがメッセージ*1。政策決定者へのメッセージは,上と少し様子が違って,相加影響ってのは,単なる一つの表現でしかないという事実に気づくべきだ,みたいな主張をされている。

Khan et al. 2011. Differential tolerance of two Gammarus pulex populations transplanted from different metallogenic regions to a polymetal gradient. Aquat Toxicol 102:95-103.

要旨と最後の方をざら読み。ヨコエビの類。重金属の曝露経験がある個体群とない個体群でin situ実験。半分が死ぬまでにかかる時間が異なったのは,曝露経験がある個体群で鰓へのダメージに耐性があって,そのおかげで鰓を通した重金属の摂取が低減されたせいではないかと推察している*2

*1:今更気づいたけど,この風潮だと,意外にボクの研究テーマはホットなのか。しかしかなり難しいと思います。

*2:体内での重金属の分布に違いは見られなかった