A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Fox D.R. (2012) Response to Landis and Chapman (2011). Integr. Environ. Assess. Manag. 8:4-4.

NOECやLOECの使用をやめようという論文に対するFoxさんからのコメント。ボクの理解ではFoxさんは統計学者で,無影響濃度を推定する際に,ANOVAの使用より回帰分析などのモデルベースの方法を推奨している人。基本的に著者らの主張に同意するけど,(NOECなどの使用の)完全な禁止に対しては同意できないようです。別の手法から一つの特定の方法に焦点をあてる方法が進むべき道だと思わないと言っているんだと思います「I do not believe focusing one particular mode of thinking over another is the way to proceed」。ちなみに,Geroge Boxさんの言葉も引用されています。「all models are wrong, it's just that some are useful.」

Landis W.G., Chapman P.M. (2012) Author's reply. Integr. Environ. Assess. Manag. 8:5-5.

上のコメントに対する著者らの返答。悲痛さがにじみ出ている気がします。NOEC等の利用が良くないことは昔から主張されていましたが,全然なくならないことを考えれば,著者らの「If publication is the currency of science then we must prevent counterfeits」というコメントがそれを物語っています。以下の最後のコメントもなかなか痛烈です。

Current guidelines still accept results from hypothesis testing in risk assessment (USEPA 2011). Until the regulatory agencies use current methods and approaches, they cannot claim to be using the best science to inform policy decisions.


ボク個人の意見としては,どちらの気持ちも分かるような気がします。OECDガイドラインも変わってきているようなので*1,自然と世の中の流れは変わるような気がします。こういうやり取りが読めるのが,IEAMの良いところだと思う。

*1:ちらっと聞いたような気がするだけなので,誤情報だったらすみません

Chapman P.M. (2007) Heavy metal―music, not science. Environ. Sci. Technol. 41:6-6.

上の論文にあった意見論文。「ヘビィメタル:科学ではなく音楽」というまたまたキャッチーなタイトルです。Chapmanさん。まったく深く考えてなかったですし,ボクの読んでた論文は大体heavy metalsという表現を使っていたのでそれに習っていましたが,重金属というのは明確な定義がないので,heavy metalsという用語は使うべきではないというChapmanさんの主張。heavy metals という言葉は,文献が科学ではなく音楽でない限り,edit outする必要があるという主張。以下の本に,この辺りの定義についてはもう少し詳しく書いてありますが,この本の著者らは色々言及した後に,heavy metalsではなく,trace metalsという言葉を(実用的な妥協案として)使うとしています。

Luoma S.N., Rainbow P.S. (2008) Metal Contamination in Aquatic Environments. Cambridge University Press, Cambridge, UK.

追記:120504

van Dam RA, Harford AJ, Warne MSJ. 2012. Time to get off the fence: The need for definitive international guidance on statistical analysis of ecotoxicity data. Integr Environ Assess Manag 8:242-245.

NOEC/LOECがなぜなくならないか,大きな理由は,国際的なガイドラインがそれらの利用の推奨をやめなかったから,という著者らの主張。OECD(2006)にあるNOECの導出方法に関するガイドラインを提供する理由が引用されて,それに対する反論があったりする。主に政治的?あるいは歴史的な部分について,より細かい議論がされている。

追記:120627

Van der Vliet et al. 2012. NOEC: Notable oversight of enlightened Canadians: A response to van Dam et al. (2012). Integr Environ Assess Manag 8:397-398.
van Dam et al. 2012. Canada showing the lead, however, we still have a NOEC problem: Response to van der vliet et al. (2012). Integr Environ Assess Manag 8:399-400.

上の,van Damさんの記事に対するコメントとそれに対する返答。Van der Vlietさんの方は,カナダはすでにNOECやLOECを使わないようにガイダンスやEnvironmental Effect Monitoringでなっているが,その点への議論が抜けているという話。日本のWETの話が出ているけど,どうなんだろ,NOECでやらないのかな(そういえば,よく知らない)。あと,野外から持ってきた底質を使った毒性試験とか,やはり仮説検定型の統計解析が馴染むものもある。との話。
それに対する回答は,概ね受け入れて*1,(非常におおざっぱにまとめると)我々は同じ目的に向かっている。という感じ。

*1:色々細かいことは言っているけど