A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

x軸に誤差がある時の回帰のお話

Sonderegger et al. 2009. Effects of measurement error on the strength of concentration-response relationships in aquatic toxicology. Ecotoxicology 18:824-828.

生態学会の自由集会に触発されたわけではないのですが,Sondereggerさんがxに誤差がある場合に(といってもたいていの場合はあるのですが),単純に回帰するのはよろしくないという論調の論文をちょうど出されていて,たまたま見つけました(ほんと)。統計の細かい方法は追えてないのですが,とりあえず,見事に誤差があると傾きが過小評価されるとのこと(これは「傾きの絶対値が」という意味か?)。Sondereggerさんは重金属濃度(こちらを補正する)とヒラタカゲロウ科の個体数の関係を推定する例を出していて(この前の論文もそうだった),確かに統計学的には正しいのでしょうが,果たして生態学的にそれでいいのか?とも思いました。つまり,どの濃度がヒラタカゲロウの個体数を規定しているのか?という疑問です。例えば,今のボスは酸性河川の底生動物群集の回復を調査していたりするのですが,pHが平均値で回復しても,たまにpHが酸性よりになるような河川では,まだ十分な回復が見られないとのこと。つまりそういうの考慮できてないと,いかに統計学的に正しくても,生態学的に妥当でなさそうとなるので,「うーん」となるんじゃないかなぁと。
どこまで細かく考えるべきかは,導く結論に依存するとは思いますが,できればそういう議論が論文の中にあれば,素敵だったんじゃないかなぁと感じました。うまく話しかけられるか甚だ疑問ですが,SETAC NAで会えたりしたらおもしろいのに。