A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

理論ベースと経験ベース

化学物質の複合影響の話を少し頑張って勉強した後での感想です。理論は一般化のために重要だし,統計解析やその類の解析*1は,まだまだ一般化ができない中で一定の結論を導き出すために必要。生態毒性学の中で主流なのは,同じような毒性機構が仮定されたConcentration addition(CA)と,独立した影響を仮定するIndependent action(IA)の二つのモデル。Backhausさんが下のビデオで言っているように,生物の生体内での応答は複雑だし,厳密に毒性メカニズムを特定することは難しく,これらの仮定も結構曖昧に扱われている,あるいは,そういう仮定は無視してとりあえず二つのモデルを当てはめて,IAモデルでみたらどうでした,んでCAでみたらどうでした,みたいな報告をしている論文も多い*2。ということで,理論が必要!なんだけど,いかんせん複雑で一般化が難しい。しかも,理論によって単純化することは大事なんだけど,それがどれくらい現実のプロセスを説明できているのか?色々よく分からない状況で,それをデータに当てはめても厳密な意味での検証が難しい。かといって,経験的な統計解析では一般化がされずに,先が見えにくい,というか見えない。レギュラトリーには当面は,「とりま,CAを仮定していきましょう」ということなんだろうけど*3,果たして次に一歩をどう出るか?下で紹介した報告書に,同じような物質群でしか複合影響は評価されていない(例えば,金属なら金属のミクスチャー)というコメントがあったけど,まぁそれは状況的にそんな複雑にしても得ではないですよね?という思いが働いているのかもしれない。影響のモデリングは難しいので*4,当面は,実際にあるミクスチャーの中で,どの物質の影響が大きそうか?を調べることが重要になってくるような気がします。一般化が難しいので,ミクスチャーの問題こそ,地域密着型の研究であるべきだと思うんですが,まぁそうは問屋が卸さないでしょうね*5

関連して,Jonker et al.な人たちのモチベは,やはり,メカニスティックに厳密にはわからないので,色々なモデルを適用してみましょう。みたいなノリ。

For most mixtures the mode of joint action is unknown. Consequently,CA and IA cannot be used for actual effect prediction in most of the cases, because it is unknown whether the mechanistic model conditions are met. As a result, their mechanistic meaning is mostly ineffective. Wecan only focus on their mathematical connotation instead:
http://www.ceh.ac.uk/products/stats/mixturetoxicity-analysistools.html

*1:例えば,理論をベースに拡張した統計解析とか

*2:果たしてこれに何の意味があるのかはあまりよく分からない。。

*3:BackhausさんのYoutubeビデオもそういう流れ

*4:別に諦めているわけではないです

*5:色んな意味で