A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

Wenning (2011). Broadening the ecology in ecological risk assessment. Integrated Environmental Assessment and Management, 7(2), 155-155.

よくある,生態学をとりいれていきましょう,といった内容です。今回は,Traits-based Ecological Risk Assessment (TERA)特集のイントロ的な役割?(Editorial)。環境流量の方でよく出てくるPoffさんが出てきました。全然よく分かってないんですけど*1,Traitsだけでそんなにうまくのかなぁとも思っていたり。そのうち,特集号の論文も眺めてみます。

  • 2011/4/15追記
    • 同じ号のVan den Brink et al. Traits-Based Approaches in...に,表1に利点と欠点等がサマリーがある。例えば,「地理的に離れていても,同じようなtraitを持った群集とかがなりたっているかもしれなくて,そうすると,地理的に離れた場所での外挿も可能になるかも(意訳含む)」とかは,最近輪読会で聞いた話で,ありえそうなのかもしれませんが,そんなにうまくいくかな。。というのが印象です。同じTraitsを持った種の感受性が一致するとも限らないし*2。traitの利用は,確かに分類群をメインに話をしている今の状況に刺激はくれるとは思うのですが,例えば,底生動物だと,摂食機能群*3ごとの重金属に対する応答とかは既往研究で報告されていて,分類群で分かる以上の,きれいな結果は見えていないような感触を持っています。
    • Rubach et al. 2011は,個体群レベルの応答を最終的なアウトプットとして,色々書いている。どれくらい時間スケールで,実現可能だと思っているのだろう。今度,Davidさんに会ったら聞いてみたい*4
    • ちなみに,ここでのtraitの定義は,"A trait is a phenotypic or ecological character of an organism, usually measured at the individual level but often applied as the average state of a species. Traits describe the physical characteristics, ecological niche, and functional role of a species within the ecosystem."
    • いずれの論文も長いので,適当にかいつまんで読んだだけで,結局批判的なコメントばかりになってしまいましたが,自分でもなんかできればおもしろいかもしれません。

Racher et al. (2011). Linking environmental assessment to environmental regulation through adaptive management. Integrated Environmental Assessment and Management, 7(2), 301-302.

稼働している鉱山のような開発(developments)を対象に,順応的管理の原則を適用する標準的な方法がなく,Wek'eezhii*5 Land and Water Boardという委員会?が Guidelines for Adaptive Management - a Response Framework for Aquatic Effects Monitoring というドラフトを出したそうです。中身はまだ見てません。結局,どういう生態系の状況を指標とするかが問題となるような記述有り。

  • 2011/4/4追記
    • WLWB(2010)読了。制度も踏まえて,順応的管理の枠組みとその適用方法に言及している。順応的管理を知っている人ならば,特段目立っておもしろい点はないと思う。許容できない影響をsignificant thresholdと呼んでいる。それに到達しないように,Low, Moderate, Highの三つのAction levelを設け,モニタリングを実施し,それぞれのレベルに達したら適切な対策を検討・実施する。といった感じだと思う。Significant thresholdやAction level等をどう決めるかが問題となると思うのですが,基本的にその部分についてあまり具体的には触れてない。

Van den Brink (2008). Ecological risk assessment: From book-keeping to chemical stress ecology. Environmental Science & Technology, 42(24), 8999-9004.

見た目ベースですが,Van den Brinkは大好きです*6。Wenning (2011)に引用されていたので,読んでみる。Van den BrinkはStress ecologyを言葉を結構使っているなぁと思っていたのですが,この論文で,chemical stress ecologyという言葉を持ち出してきていたのですか。基本的によく言われている(あるいは漠然とでも聞いたことがある)話なのですが,この人の方向性が見えてきました。

  • ..species traits related to morphology, life history, physiology, and feeding ecology...
    • なるほど。方針的には,分類群の過度な使用より,こういうものも大事だし,生態学的にも重要だから,評価すべきというお考えのよう。確かに,分かりやすい例で言うと,サイズによって感受性が違うとかってのもこの範疇に入るのか。ただ,feeding typeとかの分類には限界があるといった限界はあると思う(分けるのは宿命ですし,ERAに主要に使われている分類群そのものが分ける作業の産物ですが)。
  • the lack of clear evaluation criteria is not a problem of semi-field experiments alone but of ERA general,...
    • どういう影響をacceptableとするか,はメソコスム特有の問題ではなくて,ERA全体の問題。確かに,個体レベルの評価における無影響濃度も,現状では統計的に有意がないとかだし,同様の問題を抱えている。と捉えることができるのか。
  • The limited available empirical evidence on extrapolation suggests that the threshold value for no effects can be extrapolated across ecosystem structure, season, and geography (see Supporting Information).

*1:そもそも,traitsってどう扱うのかとか

*2:というか,結構地理的に離れていても,ヒラタカゲロウ類は重金属に対する感受性が高いとかは共通していて,そういう情報はある。こういう情報だけで結構十分じゃないんかな。結局,それ以上細かいことは,ローカルに調べるしかないじゃないだろうか。

*3:多分,traitの枠組みに入る

*4:重金属の感受性を系統的な位置で説明できるというPNAS論文を書いたDavidさんも共著に入っている。

*5:特殊文字があったので,この表記で勘弁

*6:そういう意味ではないです