A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

海水と淡水の種の感受性分布の比較

Miina Yanagihara, Kyoshiro Hiki, Yuichi Iwasaki (2022) Can chemical toxicity in saltwater be predicted from toxicity in freshwater? A comprehensive evaluation using species sensitivity distributions. Environmental Toxicology and Chemistry. 41(8): 2021–2027.

日置さんと書いた急性と慢性の種の感受性分布(SSD)の比較に続き、柳原さんを誘って、海水と淡水で、急性毒性値をもとに推定した種の感受性分布の平均、標準偏差、HC5(95%の種が保護できる濃度)の比較を行った論文がET&Cに掲載されました*1。オープンアクセスです!日置さんと書いた別論文や竹下さんと書いた階層ベイズSSD論文でも査読者から、この海水と淡水の比較を突っ込まれることがあり、地味に需要はあるのではないかなと思います。前置きが長くなりましたが、結論はシンプルで、

  • 対数ベースで、淡水と海水の急性SSDの平均、標準偏差、HC5は大体1:1の関係にあった
  • SSDの平均とHC5については淡水と海水間で強い相関があり、それらの比は、解析対象とした104物質のほとんどで0.1~10倍の範囲にあった。
  • SSD標準偏差ではそのような強い相関はなかったが、淡水と海水の間での差異は比較的小さかった。
  • したがって、これらの関係を使えば、急性毒性には絞られるが、特に十分な数の試験生物種の毒性値がある場合は、淡水のSSDから海水のSSDを大凡推定することができる。

日置さんと急性と慢性SSDの比較論文を書いた後に、これ海水と淡水でもできますね、という話になって動き出した研究ではありますが、これまでの研究だと部分的な情報または限られた物質数での比較しかなく、個人的にきちんと整理できてとてもよかったと思います!

*1:最初からET&C提出でしたが、IF的にもうちょっと欲張っても良かったのかもしれません。いやまぁ、ボクはこれで満足なのですが…。