A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

河川における金属の生態影響調査でどの生物グループを調査すべきか?

Namba H, Iwasaki Y, Heino J, Matsuda H. 2020. What to survey? A systematic review of the choice of biological groups in assessing ecological impacts of metals in running waters. Environ Toxicol Chem. DOI: 10.1002/etc.4810.

横国大の難波さんの修士研究のサブワークが論文になりました!個人的に,これやりたいなぁと思っていた研究なので形になってよかったです(私は共同筆頭+責任共著者です)。さらにHeinoさんを巻き込めたのも個人的にめっちゃ嬉しい*1。オープンアクセスですので*2,是非読んで下さい(日本語の情報で流しても,誰得感はありますが)。あと,これは個人の好みで,個人的にはWillやTravisと書いた2018年のES&T論文くらい魂が籠もっていて大事だと思っている研究なのですが,敢えて王道で(IFがもうちょっと・・・な)ET&Cに出しました*3。主要なメッセージは以下の通り。

  • みんな底生動物好き!
    • 1991-2015年までで,付着藻類,底生動物,魚類を対象に金属の生態影響(個体群や群集レベルの応答)を河川で調査している論文をWoSから抜き出し,さらに選別して,約200論文くらい抽出した結果,全期間通して,付着藻類や魚類に比べて,底生動物が最も頻繁に調査対象となっていました(約60%程度)。
  • 3つの生物グループ(の指標)間の相関は,多くの場合で0.7未満と高くなく,特定の生物グループを調べるだけでは,河川生態系の全体的な応答を把握することは難しい。
  • 解析したデータは限られているものの,金属の汚染指標と相関が高いの底生動物(指標)であり,特段評価や保全対象が決まってない場合は,(おおざっぱにいって)通常の調査で分析される種数や個体数の応答性が高い「底生動物を調査しときましょ」ともいえる。
  • 総じて,メタ解析できるデータが少ない。ちゃんと論文出したときはデータを出しましょう(自戒の念をこめて)。
    • カナダやアメリカでももっと多くのモニタリングデータがあるはずで,論文になってない問題(そういうデータをどう出すべきか問題)もあることが,査読やKellyさんとメールを通じて感じることができました。
    • 今回の生データは付録にこれでもかって載せております。煩雑かもしれませんので,不明な点は私めに。。。

*1:次は,Julian Oldenかしら(ネタです)。

*2:環境総合研究推進費からの助成

*3:だって,SETAC好きなんですもの。まぁこれはいいです