Carr GJ, Belanger SE. 2019. SSDs revisited: Part I—a framework for sample size guidance on species sensitivity distribution analysis. Environ Toxicol Chem. 38(7):1514–1525.
某P○○の方からクレームが来たらごめんなさいなのですが、この論文すごく重要なテーマを扱っているのですが、個人的に非常に読みにくいと感じました。ただ、今の研究に関係してくるので、半日+αくらいかけて読みました。まずは読みにくさの理由を後学のために、整理しておきたいと思います*1。
- 一言でざっくりいうと、著者らの曖昧な語りが論文になっている感じで何をやったのかが前もってイメージしにくい。
- 通常の原著論文なのですが、マテメソから抽象的に書かれて詳細が省かれていると感じる事が多く、で結局、何をしようとしているのかマテメソから見えない。
- 付録に全部ある!というのが著者らの主張かもしれないのですが、結果を検証できる程度の情報は本文にはあるべきだと思う。
- 段落名にキャッチャーなタイトルを付けたりしているので、この省略はあえて読者にためにと思っているかもしれません。
- という感じなので、マテメソからの展開について、著者の文脈を読み取る努力を必要以上にしないといけない仕様になっていると思う。
- 結果にマテメソと考察が入っていて、わかりにくい
- 上述のような曖昧な記述なのでこうなるのはもう避けがたいわけです。お疲れさまです。
- 例えば解析対象物質が結果で初めてできます。
- X以上の条件はcouldといっている一方で、X未満の条件ではshouldといっていて、なんというか「君らの根拠どこにあんねん?その強さどんくらいなん?勝手に著者内でぶれんのやめてくれる?」という感じ*2
総じて、
- 論文としての目的と実施内容を事前に明確化する(まじこれ大事)。
- 過度に方法の詳細を省略しない。
というところでしょうか。
サンプルサイズの話は、色々シミュレーションしていますが、結局、単に13種揃うと最小値がHC5と等しくなるという点を大きな理由として、13種が最小がいいかもしれない、としています。一方で、13種未満は、greater cationを払う「べき」としています。このあたりの感覚も知りたいところです。あと、Figure 3のHC5をうまく推定できるがSDに依存しているというのは、視点としてとても重要なので、もうちょっときちんと議論してほしいかったなと思いました。
ついでに追記 # 2020/07/11
Belanger SE, Carr GJ. 2019. SSDs revisited: Part II—Practical considerations in the development and use of application factors applied to species sensitivity distributions. Environ Toxicol Chem. 38(7):1526-1541.
上の続編。よく見ると、そもそもタイトルにSSDという略記を使っている時点でいけてない。さて、こちらも上の論文と同じく、方法も結果もごっちゃになっていて、結果でダラダラと説明される展開。表も長くて見づらい。最後に、5以上のAFを使うのは我々の解析結果からは支持されないっとこそっと(曖昧な理由をあげつつ)書いているのも、ちょっとあまりフェアじゃない印象を受ける。HC5の推定だけでも異なるソフトウェア間で微妙なずれがあるともいえるし、ソフトウェア間で異なる分布を採用していることを考えると(データが十分にあれば)大きく変わらないことを示しているともいえるとか、個人的には地味に面白い結果が含まれているのに、やはり書き方自体にちょっと残念な印象を受けます。