A way of thinking

筆者個人の思考過程です。意見には個人差があります。

2021年の振り返りと2022年の目標

毎年この記事の作成が遅くなっている気がしますが,本年もよろしくお願いいたします。なんというか,もうなんか忙しくない人っているんですか?って飛び交うメールを眺めながら,感じてしまう今日このごろです。今年も,月に数回職場+たまに野外調査という感じで,主にテレワークな日々でした。そのおかげか,昨年同様,論文のアウトプット自体はわりとできたんではないかなと思います。年明け早々,やっぱそうですよねぇ,という感じで,2月からあまり研究できなくなりそうですが,まぁこれも良い機会と思ったりもしています。一方で,忙しい中でも,現状の勤務体系の中にある自由度はやっぱボクの中で大きいんじゃないかなぁと思ったりもしています。

研究

  • 論文は,昨年ここで紹介したものを除くと,国際誌は,主著2本,共同主著論文で1本,共著で5本(1本はコレスポ),国内誌は,主著で3本(総説,資料,報告),共著で1本(コレスポ)という感じでしょうか。振り返ってみると,個人的には論文をよく書いた感があるのですが,思ったより国際誌主著は数少ないなぁという印象。個人的に出したいと思っていた論文が着実に出せていて満足です。一通り言及しつつ整理すると長くなってしまいましたが…。
    • Yuichi Iwasaki*, Keiichi Fukaya*, Shigeshi Fuchida, Shinji Matsumoto, Daisuke Araoka, Chiharu Tokoro, and Tetsuo Yasutaka (2021) Projecting future changes in element concentrations of approximately 100 untreated discharges from legacy mines in Japan by a hierarchical log-linear model. Science of the Total Environment. 786, 147500. (*These authors contributed equally to this work; Y. Iwasaki is the corresponding author)
      • FKYさんにモデリング部分を手伝ってもらった書いた論文*1。愚痴?も含めて,詳しくは本ブログのこちらを見ていただければと思いますが,いま関わっているプロジェクトや評価関係的にもこれがきちんと論文にできてよかった。関係者の皆さまありがとうございます*2
    • Yuichi Iwasaki, Kiyan Sorgog (2021) Estimating species sensitivity distributions on the basis of readily obtainable descriptors and toxicity data for three species of algae, crustaceans, and fish. PeerJ. 9:e10981.
      • もう受理がほぼ1年前で少し記憶が…という感じではあるのですが,この論文もきちんと出せてよかったです。記事はここ。3種でもわりと上手く種の感受性分布推定できそうですよって,ありそうでなかった話だと思います*3。この展開もいくつかやりたいネタがあるのですが,全然手が足りない…。
    • 岩崎雄一,加茂将史. 2021. 最小の毒性値に不確実性係数を用いて導出される予測無影響濃度の限界を意識することのススメ. 環境毒性学会誌 24,43–47
      • ある種タイトル通りではありますが,上の成果もこそっと紹介しつつ,現状の評価方法の問題点を指摘して,種の感受性分布を使うことの意義や妥当性を説明した資料論文(査読ありです)。本ブログでの紹介記事はここ。改めて,LRIから研究予算を頂いたまとまったエフォートをSSDの研究にかけて,色々勉強になったなぁと思っております。ありがとうございます。もう一本くらいは出ると思います。あとまだもう2つくらいやり残したことがあります…。
    • 岩崎雄一,眞野浩行,林彬勒,内藤航(2021)マイクロプラスチックの水生生物への粒子影響に着目した有害性評価の現状と課題. 環境毒性学会誌 24,53–61.
      • LRI繋がりで,マイクロプラスチックを対象に種の感受性分布を用いて有害性評価を行った論文をレビューして,現状と課題を整理しました。こういう情報整理は日本語ではなかったと思うので,良かったと思います。
    • Kazutaka M. Takeshita, Yuichi Iwasaki*, Thomas M. Sinclair, Takehiko I. Hayashi, and Wataru Naito (accepted) Illustrating a species sensitivity distribution for nano- and microplastic particles by using Bayesian hierarchical modeling. Environmental Toxicology and Chemistry.
      • 先日受理されて,この論文はまだオンラインにはなってないのですが,階層ベイズモデリングSSDで,ナノ及びマイクロプラスチックを対象に粒子サイズや試験媒体の効果を考慮しつつSSDを書いたというものです。またオンラインになったらここで紹介したいと思います。HYSさん紹介でTKSTさんを巻き込めて,個人的にとても助かりました。この論文も個人的にきちんと公開できそうでとても嬉しい1本です。
    • 岩崎雄一,村田道拓,川口智哉,松本親樹,保高徹生 (2022) 坑廃水原水を放流する場合に休廃止鉱山下流の水質測定地点の金属濃度は環境基準を達成できるか?単純希釈に基づくスクリーニング評価 Journal of MMIJ
      • これも先日受理されて,まだオンラインになっていません。タイトルの通りですが,これもきちんと論文になってよかったです。といっても,Journal of MMIJの「報告」枠ですが。資源素材学会の雑誌にも論文を載せられてよかったように思います。オンラインになったら,またここで紹介できればと思います。
    • Kyoshiro Hiki, Kenta Asahina, Kota Kato, Takahiro Yamagishi, Ryo Omagari, Yuichi Iwasaki, Haruna Watanabe, and Hiroshi Yamamoto (2021) Acute toxicity of a tire-rubber derived chemical, 6PPD quinone, to freshwater fish and crustacean species. Environmental Science & Technology Letters 8(9): 779–784.
      • 貢献度は低いのですが,これもいい思い出です!これ知ってる?的にHKさんにメールしたら,標品ないので合成ができる人居ませんか?みたいになって,ちょうど少し前に知り合った弊所のASHNさんに相談したら,できますよ,との流れで,トントン拍子に?研究開始まで展開した感じです。リンクの強さというか大事さというか,そういうのを改めて実感しました。あと,やっぱHKさんが仕事が早い。
    • Michio Murakami, Fuminari Miura, Masaaki Kitajima, Kenkichi Fujii, Tetsuo Yasutaka, Yuichi Iwasaki, Kyoko Ono, Yuzo Shimazu, Sumire Sorano, Tomoaki Okuda, Akihiko Ozaki, Kotoe Katayama, Yoshitaka Nishikawa, Yurie Kobashi, Toyoaki Sawano, Toshiki Abe, Masaya M. Saito, Masaharu Tsubokura, Wataru Naito, Seiya Imoto (2021) COVID-19 risk assessment at the opening ceremony of the Tokyo 2020 Olympic Games. Microbial Risk Analysis. 19, 100162.
      • 途中参加で,あまり貢献できてないのですが,個人的にはこういう評価ができるモデルを作った意義はとても大きいのではないかなぁと思っています。プレスリリースはこちらです。MARCOという有志研究チームでやっています。リスク研究者の懐の広さも含めて,陰ながら刺激を頂いております。
    • Naohide Shinohara, Jun Sakaguchi, Hoon Kim, Naoki Kagi, Koichi, Tatsu Hiroyuki Mano, Yuichi Iwasaki, Wataru Naito (2021) Survey of air exchange rates and evaluation of airborne infection risk of COVID-19 on commuter trains. Environment International, 157, 106774.
      • SNHRさんの凄さを実感しました(いろんな意味で)。実験しんどかったっす。
    • 香川裕之,岩崎雄一*,木村啓,犬飼博信,佐々木圭一,安田類,保高徹生,山縣三郎,河村裕二(2021)鉱山廃水流入河川における底生動物及び付着藻類群集の流程変化:金属汚染に対するこれらの生物群集の変化は異なるか?環境学会誌 44,115-124
      • 査読しんどかったのですが,勉強になる指摘も頂けて,個人的には勉強になりました。KGWさん,お疲れさまでした。藻類と底生動物を同時に調査した経験はなかったので,その意味でもこういう話に混ぜてもらいボク自身も経験になりました。
    • Hiroyuki Mano, Yuichi Iwasaki, Naohide Shinohara (2022) Effect-based water quality assessment of rivers receiving discharges from legacy mines by using acute and chronic bioassays with two cladoceran species. Water Supply.
      • これも最近受理された共著論文。推進費の成果で,鉱山周辺で採水し,ミジンコを用いた生物応答試験の結果がまとめられています。この結果と庭生動物調査との結果を比較したものを出すのがボクの担当…。。生物応答試験って実際の環境影響との関連がいまいちだからなぁって当初は思っていたのですが,実際にMNさんとやってみて(ボクは試験してないですが),やって良かったなぁと思っています。
    • Kyoshiro Hiki, Yuichi Iwasaki, Haruna Watanabe, Hiroshi Yamamoto (2022) Comparison of species sensitivity distributions for sediment-associated nonionic organic chemicals through equilibrium partitioning theory and spiked-sediment toxicity tests with invertebrates. Environmental Toxicology and Chemistry.
      • これも比較的最近受理されました。底質の毒性ってこうやって予測できるのかぁっていうのと,試験自体にも色々難しいところがあるのだなぁとわかって面白かったです。これも種の感受性分布(SSD)を活用したお話。
  • 変わらず,テレワークの日々
    • 去年同様に,ほぼテレワークでした。特段変わりないのですが,椅子はバランス シナジーを自前で購入しました。コンパクトで,個人的には気に入っています。たまに行く職場で皆さんと対面で雑談するのもいいですが,すっかりテレワークに慣れてしまいました。
    • 学会も,オンラインでSETAC NAとAUにも参加しました。録画で楽なのですが,やはり何かもう一つ…という感じがします。オンラインだと,あまり学会に参加しようというモチベがそろそろ…という感じです。AUは一応Discussionのセクションで質疑の時間があったのですが,調査中でレンタカーの中から参加しました*4
    • 野外調査はそこそこいけた気がします。外注も含めて,春秋で底生動物調査ができたし(O鉱山),科研費の調査も含めて,今年は和賀川にも3回ほど行きました。来年は,Y鉱山でほそぼそでも調査できるといいなぁと思っています。
  • 休廃止鉱山における利水点等管理及び生態影響評価のガイダンス(案)が公開
    • ここ数年作成に関わっていたガイダンス(案)が4月に公開されて,個人的にはとてもうれしく思っています。ここの下の方。ガイダンス(案)ができてもそれが使われないと特段という感じではあるので,引き続きがんばります。生態影響評価ガイダンス(案)は,休廃止鉱山以外のケースでも活用(参考にして)いただけるかなと思います。。

日常

  • 帰高は秋に1回のみ。往復サンライズという特殊な移動方法ですが,意外と快適で楽しかった気がします。
  • 次男は2歳で,よくしゃべっています。鼻歌をしながらパズルをするのが,面白い。長男は,筆算3桁とかもやっていて,なんというかすごいですね…という感じです。4月から小学生!
  • テレワークなので,かなりの割合で送り迎えを担当したせいか,長男のときよりも次男がなついてくれているような気がします。
  • 夏休みは,昨年に引き続き再度,群馬方面で恐竜。相変わらず恐竜センターはほぼ貸し切りだったし,川にも足つけて遊んだりできたし,カブトムシもとれたし,個人的には2回目でもまた楽しめて良かったように思います。秋には,福井の恐竜博物館あたりにもいって,こちらもとても良かったです。

今年の目標・抱負

  • 2月から少し動きがありそうで,しばらくあまり研究ができなくなりそうですが,ぼちぼち生きていきたいと思います*5
  • 論文は,投稿中の3本*6を受理までもっていき,推進費のまとめ論文を早めに投稿したいところです。
  • どれくらい研究できるか不明ですが,科研費の底生動物の方の解析をほそぼそでも進めたいし,SSD研究でやってみたいと思っていることをやりたい。。。
  • 今まで1回も行ったことがない日本の学会にも参加したい*7
  • 英語の総説(ひとまず書いておくが,予定なし)
  • オンラインで英会話を習ってもいいかも(とずっと思っているけどこれも結局できてない…)。
  • 環境が変わるタイミングなので,これを機に今後も含めて色々考える時間が取れるといいなぁと…思っていますが…はてさて。

*1:FKYさんとの共著が個人的なモチベの源泉の一つでした

*2:Teams越しでしかご相談できていないAさんとかにも今年は会えるだろうか

*3:一方でまぁある程度予想できるよねというのはあると思います

*4:なんというかなんでもできるなぁと思ってしまった

*5:これ自体は,いろんな経験をできる良い機会かなとも思っていますが,はてさて

*6:国際誌と国内誌の主著1本,コレスポが1本

*7:今年もコロナ禍で新しい学会に参加はできてないですね…

種の感受性分布に関するセミナー

11月に環境毒性学会の主催で始まった環境毒性リレーセミナーの第1回の録画が,Youtubeに公開されています。生態リスク評価(特に有害性評価)の基本的な部分を理解できていれば,わりとすっと種の感受性分布が理解頂けるのではないかなぁと思っています。後半はゆるゆると質疑応答しております。最初の部分の録画をしそこねていたので,取り直しているのですが,朝一家族が寝ている間にとったので,テンション低めですみません。永井さんの部分はどこまでが録画なのか,わからないくらいにうまく繋がっています笑 質疑で言及している論文は以下の感じかなと思います。わりと,岩崎・加茂(2021)に関連論文への誘導はできていると思いますし,永井さんが作られたSSDのマニュアルもとても参考になると思います。


www.youtube.com

Posthuma, L., van Gils, J., Zijp, M.C., van de Meent, D. and de Zwart, D. 2019. Species sensitivity distributions for use in environmental protection, assessment, and management of aquatic ecosystems for 12 386 chemicals. Environ. Toxicol. Chem. 38(4), 905–917. doi: 10.1002/etc.4373
Hoondert, R.P.J., Oldenkamp, R., de Zwart, D., van de Meent, D. and Posthuma, L. 2020. Reply to “Concerns About Reproducibility, Use of the Akaike Information Criterion, and Related Issues in Hoondert et al. 2019” and Focus in Developing QSAR-Based Species Sensitivity Distributions. Environ. Toxicol. Chem. 39(7), 1302-1304. doi: 10.1002/etc.4737
Sorgog, K. and Kamo, M. 2019. Quantifying the precision of ecological risk: Conventional assessment factor method vs. species sensitivity distribution method. Ecotox. Environ. Safe. 183, 109494. doi: https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2019.109494
Iwasaki, Y. and Sorgog, K. 2021. Estimating species sensitivity distributions on the basis of readily obtainable descriptors and toxicity data for three species of algae, crustaceans, and fish. PeerJ 9, e10981. doi: 10.7717/peerj.10981
Hiki, K. and Iwasaki, Y. 2020. Can we reasonably predict chronic species sensitivity distributions from acute species sensitivity distributions? Environ. Sci. Technol. 54(20), 13131–13136. doi: 10.1021/acs.est.0c03108
岩崎雄ー, 加茂将史 2021. 最小の毒性値に不確実性係数を用いて導出される予測無影響濃度の限界を意識することのススメ. 環境毒性学会誌 24, 43–47. doi: 10.11403/jset.24.43

皆様,良いお年をお迎え下さい。

マイクロプラスチックの実態と未来予測

ボクなんかが説明するのも恐縮ですが,海洋プラスチックごみ問題の現状から,問題点の整理(それもかなり幅広く),実際の海岸での観測から始まる研究の経緯,最新の研究成果である将来予測までを,とても魂が伝わってくる文章でほぼ半日で読み切ってしまいました。めっちゃ良かったです。本書へのモチベはあとがきの「査読を経て国際学術誌に発表した話以外は書かない」という言葉からも伝わってきます。ちなみに,以下の講演動画もおすすめです(小並感)。ボクはこの動画を見て本書を買ったのですが,引用文献たっぷりでボクみたいな方にもおすすめです。個人的は,Ecotoxな分野では馴染みあるのBurtonのES&Tのviewpointが出てきたのも良かったです。
youtube.com

マイクロプラスチックの有害性評価の現状と課題

岩崎雄一, 眞野浩行, 林彬勒, 内藤航. 2021. マイクロプラスチックの水生生物への粒子影響に着目した有害性評価の現状と課題. 環境毒性学会誌 24:53-61. 10.11403/jset.24.53

タイトルの通りなのですが,マイクロプラスチックの粒子影響という観点から,種の感受性分布を用いて有害性評価した既往研究をレビューして,現状と課題を整理した総説論文を出しました。MPの曝露や動態の情報は,日本語で結構あるのですが,リスク評価とか予測無影響濃度の文脈で,有害性評価の話を書いたものはないので,わりとよい日本語の情報にはなるのでは?と思っています*1。個人的には,本論ではないのですが,「はじめに」の後半あたりで記述した議論(2点)ほどは,紹介できて良かったなと思います*2。詳しくは是非本文を!

*1:国際誌が自分で読める人はおいておいて

*2:このあたり今後つっこまれるかもしれませんが,是非色々議論が展開するといいなぁと思います

Oono Yuki

だいぶ前にNSNさんかHYSさんに教えてもらった,Oono Yuukiをつくばロックフェスでオンラインで見て,とても気に入っている。バンドの方をメインで聞いているけど,ここで8/7まで見れる弾き語りもよい。
cgcgpub.bandcamp.com

海底資源関係のERA論文

Washburn T, Rhodes ACE, Montagna PA. 2016. Benthic taxa as potential indicators of a deep-sea oil spill. Ecol Indic 71:587-597 DOI: 10.1016/j.ecolind.2016.07.045.
Washburn TW, Menot L, Bonifácio P, Pape E, Błażewicz M, Bribiesca-Contreras G, Dahlgren TG, Fukushima T, Glover AG, Ju SJ, Kaiser S, Yu OH, Smith CR. 2021. Patterns of macrofaunal biodiversity across the Clarion-Clipperton Zone: An area targeted for seabed mining. Frontiers in Marine Science 8 DOI: 10.3389/fmars.2021.626571.
Washburn TW, Turner PJ, Durden JM, Jones DOB, Weaver P, Van Dover CL. 2019. Ecological risk assessment for deep-sea mining. Ocean & Coastal Management 176:24-39 DOI: 10.1016/j.ocecoaman.2019.04.014.

Travisさんと打合せするに,ざっと眺めました。というメモでごめんなさい。最後の論文とかペラペラめくった程度で,現状がどんなものかはなんとなく妄想できました,程度です。Ecological Indicatorの論文はわりと真面目に読んだのですが,調査対象の場所の正確な想像できないものの,やっていることはまぁどこでもこんな感じですよね,というのは理解できた。種同定が困難とか海底の深さの問題とか,わりと色々と課題があるということもわかりました。どこまでの影響をアクセプトするかは,さらに難しい問題。

重回帰分析の難しさ

吉田寿夫, 村井潤一郎. 2021. 心理学的研究における重回帰分析の適用に関わる諸問題. 心理学研究 advpub. 10.4992/jjpsy.92.19226

Twitter界隈で盛り上がっている重回帰分析に関する論文について,いつもどおり自分のメモを残しておこうと思う。より高尚な?視点でのコメントなんかはtwitterのまとめなんかをみてもらうのがいいかなと思います(丸投げ)。

  • 全体的な感想:これはまったく批判ではないのですが,当然,引用されている実例が心理学なので,いまいちわかりにくいというのはあるかなと思いますが,総じて改めて重回帰の適用って難しいなぁと思いました。
    • 余談:第一著者の吉田さんは,大学生のときに買った『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』の著者であることに気づいて,個人的にはひそかに興奮しました。
  • 岩崎学*1さんの本等を引用しつつ,”ある現象の生起に関わる因果関係を観測研究のデータのみに基づいて完全に明らかにするのは不可能である”という前提をもとに,"我々は,それが厳密にできないまでも最善を尽くす必要がある"というスタンスは大事かなと思いました*2
  • ボクなりにちょー粗々でまとめると
    • 説明変数(独立変数)をきちんと選びなさい。
      • 例えば,重回帰の説明変数ではすべて並列的に扱われるが,説明変数間の関係とか無視していますよ。とか。X1の(直接及び間接的な)効果をみたいのであれば,X1の媒介変数を説明変数にいれてはいけませんよ。とか*3
    • 安易な因果の解釈はやめようね。
      • それっぽい文章をいれて,禊が済んだかのようにしてしまうのは望ましくないと書いてあるのも個人的には胸が…。
    • (標準)偏回帰係数の解釈もめっちゃ要注意
      • ”(標準)偏回帰係数は,「他の独立変数から当該の独立変数を予測する回帰分析における残差」と「従属変数(ないし,他の独立変数から従属変数を予測する回帰分析における残差)」の関係を示すものであり,「当該の独立変数そのもの」と「従属変数」の関係を示しているものではない*4。”とか"「x1 と従属変数の単相関係数」と「他の独立変数と従属変数の単相関係数」を比べることを通して検討すべきであろう"とかも,個人的にはなるほどなぁと思ってしまった。
    • 説明と予測を混同してはいけない*5
      • これも難しい問題だと思うけど,こういう使い方はいいよね,という記述もあったりしてよい。
    • 他にもあるけど,本文読んでください!ということで,個人的なメモでした。個人的には,Tさんが某勉強会で言っていた「データ解析に向き合う誠実さ」を改めて思い出したり。

*1:同じ岩崎なのですが,まったく関係はないです。多分

*2:個人的には,実現可能性や言及の仕方如何によっては「ぼちぼち」を前につけたいですが。

*3:余談ですが,”著者らには妥当であろう論拠が推察できない"っていい表現だなと思いました

*4:5回くらい読むとあー。。。となる感じ?

*5:本文そのまま